相続税
最終更新日: 2025-12-22

相続税について

 
相続税は、相続や遺贈によって一定額以上の財産を取得した際に課される税金です。


相続税の納税義務者について

 
相続税は、原則として相続人である個人に課税されます。ただし、社団や公益法人等が個人とみなされ、相続税の対象となる場合もあります。
納税義務者と課税対象の範囲は、財産取得時の住所や財産の所在によって以下のとおりです。
 

区分

納税義務者

課税対象の範囲

居住無制限納税義務者

相続または遺贈により財産を取得し、その取得時に日本国内に住所がある個人

国内外を問わず、取得したすべての財産

非居住無制限納税義務者

相続または遺贈により財産を取得し、その取得時に日本国内に住所がない個人のうち、日本国籍を有し、かつ相続開始前10年以内に被相続人または相続人のいずれかが日本国内に居住していた場合

制限納税義務者

相続または遺贈により財産を取得し、その取得時に日本国内に住所がない個人で、非居住無制限納税義務者に該当しない場合

国内財産のみ


相続税の計算方法①:課税価格の計算について

 
課税価格は、以下の手順で算出されます。

  1. 相続または遺贈により取得した財産を合計
  2. みなし相続財産を加算
  3. 非課税財産を控除
  4. 相続時精算課税制度による贈与財産を加算
  5. 債務および葬儀費用を控除
  6. 相続開始前7年以内の贈与財産を加算 

相続財産について

 
相続税の課税対象となる相続財産は、以下のとおりです。

本来の相続財産

 
被相続人が生前に所有していた財産を指します。
現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋、ゴルフ会員権などのほか、貸付金、特許権、著作権など、金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものが含まれます。

みなし相続財産

 
相続や遺贈で取得した財産に準じ、実質的に同様の効果を生じるものです。
主な例は以下のとおりです。

  • 死亡保険金(生命保険・損害保険)
    被相続人が保険料を負担した契約に基づく死亡保険金。ただし、保険料を受取人が負担している場合は所得税(一時所得)第三者が負担している場合は贈与税の課税対象です。
  • 死亡退職金
    被相続人に支給されるべき退職手当金等で、死亡後3年以内に支給されたもの。なお、死亡後3年超に支給された場合は所得税(一時所得)の課税対象です。また、弔慰金等が支給された場合も、死亡当時における賞与以外の給与額の半年分の額(業務上の死亡であるときは3年分の額)を超える部分は退職手当金として扱われます。
  • 生命保険契約に関する権利
    保険事故未発生の契約で、被相続人が保険料を負担し、契約者が被相続人以外の場合
  • 特別寄与料
    特別寄与者が受け取る特別寄与料。

相続時精算課税制度による贈与財産

 
詳細は以下のリンクをご確認ください。

相続開始前7年以内の贈与財産(生前贈与加算)

 
生前贈与加算とは、被相続人から相続開始前の一定期間に暦年課税による贈与を受けた場合、その贈与財産の価額を相続財産に加算する制度です。暦年贈与の基礎控除額110万円以下の贈与であっても、期間内であれば相続税の課税対象となります。
2023(令和5)年度税制改正では、加算期間が3年以内から7年以内に延長されました。ただし、延長された4年間(相続開始前3年超7年以内)に受けた贈与については、贈与財産の価額の合計額から100万円まで控除されます。
経過措置により、相続開始日が2027(令和9)年1月以降、加算期間が段階的に延長されます。結果として加算期間が7年となるのは2031(令和13)年1月以降となります。
2026(令和8)年12月31日以前に相続開始の場合、加算期間は従来どおり3年で改正の影響はありません。
加算期間の段階的延長のイメージは下図をご参照ください。
 

生前贈与加算期間の段階的延長

相続財産から差し引くことができるものについて

 
相続財産から差し引くことができるものは、以下のとおりです。

非課税財産

 
以下の財産は、相続税の課税対象となりません。

  • 墓地、墓石、仏壇、仏具、祭具などの日常礼拝用の物
  • 生命保険金のうち、「500万円 × 法定相続人の数」まで
  • 死亡退職金のうち、「500万円 × 法定相続人の数」まで
  • 弔慰金のうち、
    • 業務上の死亡の場合:「死亡時の普通給与 × 36か月」まで
    • 業務外の死亡の場合:「死亡時の普通給与 × 6か月」まで

控除対象となるもの 

 
以下の費用や債務は控除できます。

  • 借入金や未払い利息
  • 未払い医療費(治療費、入院費など)
  • 未払い税金(所得税、住民税、固定資産税など)
  • 葬儀費用(通夜、本葬、読経料)
  • 火葬料、埋葬料、納骨料、布施料
  • 遺体運搬費用
  • 死体捜索費用

控除対象とならないもの 

 
以下の費用は控除できません。

  • 生前に購入した墓地・仏壇等の未払金
  • 墓地、仏壇、仏具の購入費用
  • 遺言執行費用
  • 相続税申告の税理士報酬
  • 遺産分割協議の弁護士報酬
  • 相続不動産の登記費用
  • 相続不動産の測量・調査費用
  • 香典返礼費用
  • 初七日、四十九日、一周忌などの法要費用
  • 遺体解剖費用

法定相続人の数について

 
法定相続人とは、民法で規定された相続権を持つ者を指します。
ただし、相続税の控除額や非課税額の計算に用いる法定相続人の数には、民法とは異なる独自のルールがあります。

養子がいる場合

 
法定相続人の数に算入できる養子の数は、以下のとおりです。

  • 被相続人に実子がいる場合:1人まで
  • 被相続人に実子がいない場合:2人まで

 
ただし、以下の養子は実子とみなされ、人数制限の対象外です。

  • 特別養子縁組による養子
  • 被相続人の配偶者の実子で、被相続人の養子となった者
  • 婚姻前に配偶者の特別養子縁組による養子となり、婚姻後に被相続人の養子となった者
  • 実子または養子の代襲相続人となった直系卑属

相続の放棄があった場合

 
相続を放棄した場合でも、その法定相続人は数に算入されます


相続税の計算方法②:相続税の総額の計算について

 
相続税の総額は、以下の手順で算出されます。

  1. 課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を算出します。
  2. 課税遺産総額を、法定相続人が法定相続分で相続したと仮定して按分します。
  3. 按分した金額に、相続税の税額速算表を適用し、各相続人の算出税額を計算します。
  4. 各相続人の算出税額を合計し、相続税の総額を算出します。

遺産に係る基礎控除額について

 
遺産に係る基礎控除額は、以下の式で算出されます。
 

遺産に係る基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 


相続税の税額速算表について

 
法定相続分に応じた所得金額に対する税率と控除額は、以下のとおりです。
 

法定相続分に応じた取得金額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

1,000万円超3,000万円以下

15%

50万円

3,000万円超5,000万円以下

20%

200万円

5,000万円超1億円以下

30%

700万円

1億円超2億円以下

40% 1,700万円

2億円超3億円以下

45% 2,700万円

3億円超6億円以下

50% 4,200万円

6億円超

55% 7,200万円

相続税の計算方法③:各人の納付税額の計算について

 
相続税の計算方法②で算出した相続税の総額に、各人が実際に取得した課税価格の割合を掛けて、各人の算出税額を算出します。
 

各人の相続税額の計算式

相続税額の2割加算について

 
相続、遺贈、または相続時精算課税による贈与で財産を取得した者が、被相続人の配偶者、1親等の血族(子・父母)、代襲相続人となった直系卑属(孫・曾孫など)以外の場合には、その者の算出税額に2割が加算されます。
 

相続税の加算額 = 実際の取得割合に応じた算出税額 × 20%

 
被相続人の配偶者や1親等の血族が相続を放棄した場合は、相続税額の2割加算は適用されません。ただし、代襲相続人となる直系卑属が相続を放棄した場合は、相続税額の2割加算が適用されます。


相続税の税額控除について

 
相続税における主な税額控除は、以下のとおりです。

贈与税額控除

 
贈与税額控除の詳細については、以下のリンクをご確認ください。

配偶者の税額軽減

 
配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が相続または遺贈によって取得した財産について、法定相続分相当額または1億6,000万円のいずれか多い金額までは相続税が課税されない制度です。
配偶者の税額軽減の主な適用要件は、以下のとおりです。

  • 法律上の婚姻関係にあること(婚姻期間は問われませんが、内縁関係は対象外)。
  • 税額軽減により相続税が0円となる場合でも、申告期限までに相続税申告書を提出すること。
  • 申告期限までに遺産分割が確定し、配偶者の取得財産が決まっていること。

 
軽減される税額は、以下の式で算出されます。
 

配偶者の税額軽減の計算式

未成年者の税額控除

 
相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であり、18歳未満の場合、未成年者控除を受けることができます。
控除額は、以下の式で算出されます。
 

未成年者控除額 = ( 18歳 − 相続開始時の年齢 ) × 10万円
※年数の計算では、1年未満の期間がある場合は切り上げて1年として計算します。

 
さらに、未成年者本人の相続税額から控除額を全額差し引けない場合、残額はその未成年者の扶養義務者の相続税額から控除できます。

障害者の税額控除

 
相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であり、85歳未満の障害者の場合、障害者控除を受けることができます。
控除額は、以下の式で算出されます。
 

障害者控除額 = ( 85歳 − 相続開始時の年齢 ) × 10万円
※年数の計算では、1年未満の期間がある場合は切り上げて1年として計算します。 
特別障害者の場合は、式中の「10万円」が「20万円」となります。

相次相続控除

 
被相続人が相続開始前10年以内に発生した相続(第1次相続)で財産を取得していた場合、その被相続人から相続または遺贈により財産を取得した人は、第1次相続から第2次相続までの期間に応じて、一定額の相続税が控除されます。

  • 第1次相続から第2次相続までの期間が1年未満の場合:全額控除
  • 第1次相続から第2次相続までの期間が1年以上2年未満の場合:9割控除
  • 以降、1年ごとに軽減割合が1割ずつ減少

相次相続控除の適用対象者は被相続人の相続人に限ります。相続の放棄をした人や相続権を失った人は、遺贈で財産を取得しても控除の対象外です。

外国税額控除

 
外国にある被相続人の財産を取得し、その国で相続税に相当する税が課された場合、二重課税を防ぐため、一定額を控除することができます。


相続財産を譲渡した場合の取得費の特例について

 
この特例は、相続・遺贈・死因贈与により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内に譲渡した場合に適用されます。対象者の相続税額のうち、一定額を譲渡資産の取得費に加算できる制度です。
 

主な適用要件

 

  • 相続・遺贈・死因贈与により財産を取得した人であること。
  • その取得者に相続税が課税されていること。
  • その財産を相続開始日の翌日から、相続税申告期限の翌日以降3年を経過する日までに譲渡していること。

 
取得費に加算される金額は、以下の式で算出されます。
 

取得費に加算される金額の計算式

相続税の申告について

 
相続や遺贈によって財産を取得した人は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署長に、相続税申告書を提出する義務があります。申告書の提出期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。
なお、相続財産が基礎控除以下の場合は申告不要です。ただし、配偶者の税額軽減の特例小規模宅地等の特例を適用する場合は納税額が0円でも申告が必要です。
また、申告期限までに遺産分割協議が成立しなかった場合、各相続人が法定相続分で取得したものと仮定して申告・納税します。分割が決まった後、修正申告または更正の請求を行い、精算します。
申告期限までに分割が決まらない場合、配偶者の税額軽減の特例や小規模宅地等の特例は適用できません。この場合は、分割見込書を添付して申告し、納税します。申告期限から3年以内に分割が成立した場合、修正申告または更正の請求により、特例の適用が可能です。


申告内容が間違っていた場合等の手続きについて

 
申告後に内容の誤りが判明した場合、以下の手続きがあります。

修正申告

 
申告後、税額を少なく申告していたことに気づいた場合、修正申告を行い正しい税額に訂正します。そして、修正申告書を提出する日(納期限)までに不足分を納付します。なお、法定納期限の翌日から完納する日までの期間について延滞税がかかるため、税額と併せて納付します。

更正の請求

 
申告後、納付すべき税額が過大である場合、更正の請求により訂正を求めることができます。相続税の更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。一方、贈与税の更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から6年以内なので混同しないように注意してください。


所得税の準確定申告について

 
被相続人が年の途中で死亡した場合、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署長へ準確定申告書を提出し、所得税を納付します。納付した所得税は、相続財産から債務として控除可能です。


相続税の納付について

 
相続税は、申告書の提出期限までに金銭で一括納付することが原則です。
ただし、一定の要件を満たす場合には、延納物納が認められることがあります。


相続税の延納について

 

延納の主な要件

 
以下の要件をすべて満たす場合、延納申請が可能です。

  • 相続税額が10万円超であること。
  • 金銭での一括納付が困難であり、その困難な金額の範囲内であること。
  • 延納税額および利子税額に相当する担保を提供すること。
    ただし、延納税額が100万円以下かつ延納期間が3年以下の場合、担保は不要。
  • 申告期限までに延納申請書と担保提供関係書類を提出し、所轄税務署長の承認を得ること。

 

担保として認められる財産

 

  • 国債・地方債
  • 税務署長が確実と認める社債その他の有価証券
  • 土地
  • 建物、立木、登記された船舶等(保険付)
  • 税務署長が確実と認める保証人の保証

 

延納期間

 

区分

延納期間(最高)

不動産等の割合が75%以上

①動産等に係る延納相続税額

10年

②不動産等に係る延納相続税額(③を除く)

20年

③森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額

20年

不動産等の割合が50%以上75%未満

④動産等に係る延納相続税額

10年

⑤不動産等に係る延納相続税額(⑥を除く) 15年
⑥森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額 20年
不動産等の割合が50%未満 ⑦一般の延納相続税額(⑧、⑨、⑩を除く) 5年
⑧立木の割合が30%を超える場合の立木に係る延納相続税額(⑩を除く) 5年
⑨特別緑地保全地区等内の土地に係る延納相続税額 5年
⑩森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額 5年

相続税の物納について

 

物納の主な要件

 
以下の要件を満たす場合、物納申請が可能です。

  • 延納によっても金銭での納付が困難であり、その困難な金額の範囲内であること。

 

物納できる財産と順位

 

  • 第1順位:国債、地方債、不動産、船舶、株式・社債・証券投資信託の受益証券・貸付信託の受益証券等のうち、上場しているもの
  • 第2順位:株式・社債・証券投資信託の受益証券・貸付信託の受益証券で第1順位以外のもの(非上場株式等)
  • 第3順位:動産

 
不動産や株式には、物納に不適合となる要件があるため注意が必要です。
相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産は物納不可です。
国が収納する際の価額は、原則として相続税課税価格計算の基礎となった価額です。
小規模宅地等の特例を適用した財産を物納する場合、収納価額は特例適用後の価額となります。
 

特定物納制度

 
延納の許可を受けた後、延納による納付が困難になった場合は、申告期限から10年以内に限り、延納から物納へ変更することができます。
また、物納の許可を受けた後に、金銭一括納付や延納が可能になった場合は、物納許可日の翌日から1年以内に限り、物納を撤回することができます。