所得と所得税について
個人が1月1日から12月31日までの1年間に得た収入から、必要経費などを差し引いた金額を「所得」といいます。この所得に対して課される税金が「所得税」です。
なお、年の途中で死亡した場合や国外へ出国した場合には、その年の1月1日から死亡日または出国日までに得たすべての所得を対象として所得税が計算されます。
納税義務者の区分と課税所得の範囲について
所得税における納税義務者は、その居住状況などに応じて以下の3つに分類され、それぞれ課税される所得の範囲が異なります。
| 納税義務者の区分 |
課税所得の範囲 |
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| 居住者 |
非永住者以外(一般の居住者) |
国内に住所を有するか、または現在まで引き続き1年以上居所を有する個人 | 国内外すべての所得 |
| 非永住者 |
居住者のうち、日本国籍を持たず、かつ過去10年以内に国内に住所または居所を有した期間の合計が5年以下の個人 |
国内源泉所得および国外源泉所得のうち、国内で支払われたもの、または国内に送金されたもの |
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| 非居住者 |
居住者に該当しない個人(例:短期滞在者など) |
国内源泉所得のみ |
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所得税の計算について
所得税の申告納税額は、以下の手順で計算されます。
①所得の計算
まず、1年間の収入から必要経費を差し引いて「所得」を算出します。
所得 = 収入 − 必要経費
所得は以下の10種類に分類され、それぞれの所得金額を個別に計算します。
②課税所得金額の計算
次に、所得から各種所得控除を差し引いて「課税所得金額」を算出します。
課税所得金額 = 所得 − 所得控除
所得控除には、以下の15種類があります。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 医療費控除
- 雑損控除
- 寄附金控除
③基準所得税額の計算
課税所得金額に所得税の税率を掛け、控除額を差し引いて「基準所得税額」を算出します。
基準所得税額 = 課税所得金額 × 所得税の税率 − 控除額
④復興特別所得税額の計算
基準所得税額に2.1%を掛けて、「復興特別所得税額」を算出します。
復興特別所得税額 = 基準所得税額 × 2.1%
⑤申告納税額の計算
最後に、基準所得税額と復興特別所得税額を合算し、税額控除を差し引いて「申告納税額」を算出します。
申告納税額 = 基準所得税額 + 復興特別所得税額 − 税額控除
総合課税と分離課税について
所得税では、各所得金額は原則として合算されて課税されます。これを総合課税といいます。ただし、一部の所得については、他の所得とは分けて個別に課税される分離課税が適用されます。
さらに分離課税には、以下の2つの方式があります。
- 申告分離課税:納税者が自ら税額を計算・申告する方式
- 源泉分離課税:所得の支払時に税額が天引きされ、課税関係が完結する方式
総合課税の対象となる所得
以下の所得は、他の所得と合算して課税されます。
- 利子所得(源泉分離課税が適用される場合を除く)
- 配当所得(源泉分離課税が適用される場合を除く)
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 譲渡所得(土地・建物・株式以外、源泉分離課税が適用される場合を除く)
- 一時所得(源泉分離課税が適用される場合を除く)
- 雑所得(源泉分離課税が適用される場合を除く)
分離課税の対象となる所得
以下の所得は、他の所得とは分けて個別に課税されます。
申告分離課税の対象となる所得は、次のように覚えましょう!
非課税所得について
原則として、すべての所得は所得税の課税対象となります。しかし、所得の性質や社会的配慮の観点から、一定の所得については非課税とされています。
主な非課税所得は以下のとおりです。
- 職務上必要な作業服や制服などの現物給付
- 月額15万円までの通勤手当
- 健康保険・雇用保険・労働災害補償保険などの保険給付
- 遺族や障害者が受け取る恩給および公的年金
- 宝くじの当選金やスポーツ振興投票券(toto等)の払戻金
- 生活用動産(30万円以下)の譲渡による所得
- オープン型証券投資信託の元本払戻金(特別分配金)
- NISA口座内で得た上場株式等の配当や譲渡所得
- 身体の障害に起因して支払われる損害保険・生命保険の保険金
- 資産の損害に起因して支払われる損害保険の保険金