不動産登記法について
不動産登記法は、不動産の表示や不動産に関する権利を公示するための登記制度を定める法律です。これにより、国民の権利を保護し、取引の安全と円滑を確保することを目的としています。
登記について
登記とは、不動産を購入・相続・新築した場合に、登記官が不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に備えられた登記簿へ登記事項を記録し、公示することをいいます。
不動産登記には、以下の効力があります。
- 対抗力:物権変動を第三者に対抗できます。
- 推定力:登記記録が真実であると一応推定されます。
- 確定力:すでに登記された事柄と矛盾する事柄は登記できません。
ただし、不動産登記には公信力がありません。したがって、登記記録を信頼して取引しても、法的な保護は受けられません。ちなみに、公信力とは、登記上の表示を信頼して不動産取引をした者が、たとえ名義人が真の権利者でなくても、一定の要件を満たせばその権利を取得できることをいいます。
登記できる権利等について
不動産の表示、または不動産に関して、以下の権利の保存・設定・移転・変更・処分の制限・消滅について登記することができます。
- 所有権
- 地上権
- 永小作権
- 地役権
- 先取特権
- 質権
- 抵当権
- 賃借権
- 配偶者居住権
- 採石権
登記申請について
登記の申請は、以下のいずれかの方法で、必要な情報を登記所に提出しなければなりません。
- 登記所に直接出向く。
- インターネットを利用する。
- 郵送や信書便を利用する。
登記が完了すると、登記官は登記識別情報(12桁の英数字)を登記申請者(=登記名義人)に通知します。ただし、申請者が事前に「通知不要」の申出をしている場合は通知されません。
なお、登記識別情報は、登記名義人が登記を申請する際に、本人確認の手段として利用されます。
相続等による所有権移転登記の申請について
所有権の登記名義人が死亡し、相続が開始した場合、相続によって所有権を取得した者は、相続開始と所有権取得を知った日から3年以内に、所有権移転登記を申請しなければなりません。なお、相続人に対する遺贈により所有権を取得した場合も同様です。
また、登記後に遺産分割が行われ、分割によって相続分を超えて所有権を取得した場合は、遺産分割の日から3年以内に、所有権移転登記を申請する必要があります。
不動産登記記録について
不動産の登記記録は、一筆の土地または一個の建物ごとに登記簿へ記録されます。原本である登記簿を全部複写し証明したものを「登記簿謄本」、一部を複写し証明したものを「登記簿抄本」といいます。
従来は紙で記録・保管されていましたが、現在はコンピューターによる電子的記録・保管に移行しています。電子的に保管された登記事項を印刷し、証明したものを「登記事項証明書」といいます。登記簿謄本・抄本と登記事項証明書は名称こそ異なりますが、内容は同じです。登記事項証明書には、認証文・作成年月日・登記官の職氏名が記載され、職印が押されます。
類似する書類として「登記事項要約書」があります。これは登記記録の概要を記載したもので、認証文や職印はありません。
不動産の登記記録は、表題部と権利部から構成され、権利部はさらに甲区と乙区に分かれています。
表題部
表題部には、不動産の表示に関する登記が記録されます。主な内容は以下のとおりです。
- 登記原因およびその日付
- 登記の年月日
- 所有権の登記がない場合の所有者の氏名または名称・住所、所有者が複数の場合は所有者ごとの持分
- 不動産を識別するために必要な事項
土地の表示に関する登記事項は、以下のとおりです。
- 所在(市・区・郡・町・村・字)
- 地番
- 地目
- 地積
建物の表示に関する登記事項は、以下のとおりです。
- 所在(市・区・郡・町・村・字)および土地の地番
- 家屋番号
- 建物の種類・構造・床面積
- 建物の名称
- 附属建物の所在(市・区・郡、町・村・字)および土地の地番、種類・構造・床面積
- 建物が共有部分または団地共用部分であるときは、その旨
- 建物または附属建物が区分建物の場合、一棟の建物の構造・面積・名称
- 建物または附属建物が区分建物の場合、区分所有法に規定する敷地利用権で、区分所有者の専有部分と分離して処分することができない場合は、その敷地権
建物の表示に関する登記記録では、一戸建てのような一般建物の床面積は壁芯面積(壁の厚さの中心線で測った面積)で記録されます。一方、分譲マンションのような区分建物の専有部分の床面積は内法面積(壁の内側で測った面積)で記録されます。
なお、土地や建物の所有権を取得した場合、または表題部に記録された物的状況が変化した場合は、1か月以内に表題登記を申請しなければなりません。
権利部
権利部には、不動産の権利に関する登記が記録されます。主な内容は以下のとおりです。
- 登記の目的
- 申請の受付の年月日および受付番号
- 登記原因およびその日付
- 権利者の氏名または名称・住所、登記名義人が複数の場合は登記名義人ごとの持分
- 登記の目的である権利の消滅に関する定めがあるときは、その定め
- 共有物分割禁止の定めがあるときは、その定め
- 他人に代わって登記を申請した場合、代位者の氏名又は名称・住所・代位原因
権利部の甲区には、所有権に関する事項が記録されます。
- 所有権保存登記
- 所有権移転登記および仮登記
- 所有権の処分の制限
など
権利部の乙区には、所有権以外の権利に関する事項が記録されます。
- 地上権
- 永小作権
- 地役権
- 賃借権
- 配偶者居住権
- 採石権
- 先取特権
- 質権
- 抵当権
- 根抵当権の設定・移転・抹消
など
不動産登記記録の交付について
法務局(登記所)では、手数料を納付すれば、誰でも登記事項証明書(登記簿謄本)や登記事項要約書の交付を請求し、登記記録の内容を確認できます。
交付請求の方法は、郵送またはオンラインがあります。ただし、オンライン請求の場合、登記事項証明書は郵送または指定した登記所の窓口で受領する必要があります。
登記事項証明書(土地)の見本について
登記事項証明書(建物)の見本について