不動産の有効活用
最終更新日: 2025-12-13

土地活用事業手法について

 
土地を有効に活用するための代表的な事業手法には、以下のようなものがあります。

自己建設方式

 
自己建設方式とは、土地所有者が自ら土地の有効活用を計画し、直接業者に工事を発注して事業を行う方法です。
この方式のメリットとしては、収益をすべて享受できることや、不動産賃貸事業に関するノウハウを蓄積できることが挙げられます。
一方で、建物の建設資金を土地所有者自身で調達する必要があり、借入を行った場合は返済義務が生じる点に注意が必要です。

事業受託方式

 
事業受託方式とは、事業計画から建物の企画・設計・建設、さらに管理・運営までを、デベロッパーが一括して請け負う方法です。
この方式のメリットは、デベロッパーが土地・建物を一括借り上げし、テナントへ転貸することで安定した収益を確保できる点です。
一方で、建物の建設資金は土地所有者が自ら調達する必要があり、借入を行った場合は返済義務が生じることに注意が必要です。

建設協力金方式

 
建設協力金方式とは、賃借予定者であるテナントが土地所有者(建築主)に差し入れる建設協力金を事業資金とし、テナントの要求仕様に沿った建物を建設して賃貸する方法です。
この方式のメリットは、建設前からテナントが確保できること、入居者のノウハウを活かして事業計画を立案できること、さらに金融機関からの借入より有利な条件で資金調達できる場合があることです。
一方で、建物はテナント仕様に特化するため、用途の汎用性が低くなる点に注意が必要です。

等価交換方式

 
等価交換方式とは、土地所有者が提供した土地にデベロッパーが建物を建設し、完成後に土地と建物の一部を交換し、それぞれの出資比率に応じて取得する方法です。
この方式には、土地の一部を譲渡し、その譲渡価額に応じた建物の一部を取得する「部分譲渡方式」と、土地の全部を譲渡し、建物完成後に出資割合に応じた土地と建物の一部を取得する「全部譲渡方式」があります。
メリットとしては、建物の建設資金をデベロッパーが調達するため、土地所有者は事業資金を用意せずに建物を取得できる点が挙げられます。その結果、地主にとってリスクが少なく、採算性も高い事業となります。さらに、デベロッパーは土地を先行取得するための資金が不要となるなど、双方にメリットがある方式です。

土地信託方式

 
土地信託方式とは、土地所有者が土地を信託銀行に信託し、信託銀行が事業計画、資金調達、建物建設の発注、管理・運営までを一括して行う方法です。
信託期間中、土地や建物の所有名義は信託銀行となりますが、信託期間終了後には信託財産が土地所有者に返還されます。
この方式では、建物の建設資金を信託銀行名義で調達するため、自己資金を用意する必要がありません。さらに、専門的なノウハウがなくても土地の有効活用が可能であり、相続対策としても有効というメリットがあります。
一方で、開発リスクは基本的に土地所有者側にあり、元本保証はありません。事業が赤字となり信託期間が終了した場合、その損失は原則として土地所有者が負担することになります。

定期借地権方式

 
定期借地権方式とは、土地に定期借地権を設定し、一定期間土地を賃貸する方法です。
この方式では、土地の所有権は移転せず、契約期間の更新もなく、期間満了後は更地で返還されます。
メリットとしては、土地の所有権を手放さずに土地活用ができること、土地所有者に専門的なノウハウが不要であること、賃貸料による比較的安定した収入を一定期間得られることが挙げられます。


不動産の投資判断について

 
不動産投資を行う際は、採算が取れるかどうかを慎重に検討する必要があります。
採算性や収益性を評価する際に用いられる主な指標は、以下のとおりです。


総投下資本総収益利回り(表面利回り)について

 
総投下資本総収益利回り(表面利回り)とは、物件価格に対して現時点でどの程度の家賃収入が得られているかを示す収益性の指標です。たとえばアパート経営の場合、年間の家賃収入の合計額をアパートの建築費用で割って算出します。
総投下資本総収益利回り(表面利回り)は、以下の式で算出されます。
 

表面利回りの計算式

総投下資本純収益利回り(実質利回り、NOI利回り)について

 
総投下資本純収益利回り(実質利回り、NOI利回り)とは、諸経費(ただし減価償却費や借入金の支払利息は除く)を考慮したうえで、購入時に投下した資本に対してどれだけ効率的に現金収入を得られるかを示す指標です。この指標は、物件の収益性をより実態に近い形で評価するために用いられます。
総投下資本純収益利回り(実質利回り、NOI利回り)は、以下の式で算出されます。
 

実質利回りの計算式

キャッシュ・オン・キャッシュ(自己資本手取額利回り)について

 
キャッシュ・オン・キャッシュ(自己資本手取額利回り)とは、自己資本に対する現金手取額の割合を示す指標です。他人資本(借入金など)を除いた自己資本に対する収益性を評価するために用いられます。
キャッシュ・オン・キャッシュ(自己資本手取額利回り)は、以下の式で算出されます。
 

キャッシュ・オン・キャッシュの計算式

直接還元法について

 
直接還元法とは、不動産の単年度純収益を還元利回りで割り戻し、収益価格を算出する手法です。


DCF法(Discounted Cash Flow Method)について

 
DCF法とは、対象不動産が現在から将来にわたって生み出すキャッシュフローの現在価値の合計額に、保有期間終了時の復帰価格(売却価格)の現在価値を加えて収益価格を算出する手法です。
代表的なDCF法には、以下の2つがあります。
 

正味現在価値法(NPV法:Net Present Value Method)

 
正味現在価値法(NPV法)とは、対象不動産が現在から将来にわたって生み出すキャッシュフローの現在価値の合計額と、投資予定額の現在価値を比較し、投資の適否を判断する手法です。キャッシュフローの現在価値の合計額が投資予定額の現在価値を上回る場合その投資は適格と判断できます。
 

内部収益率法(IRR法:Internal Rate of Return Method)

 
内部収益率法(IRR法)とは、投資対象不動産の内部収益率に基づいて投資の適否を判断する手法です。内部収益率とは、一定の投資期間における予測キャッシュフローをもとに算出される収益率を指します。投資家の期待収益率を内部収益率が上回る場合その投資は適格と判断できます。


借入金償還余裕率(DSCR:Debt Service Coverage Ratio)について

 
借入金償還余裕率(DSCR)とは、不動産が生み出す年間キャッシュフロー(元利金返済前の純収益)を、借入金の年間元利金返済額で割った比率であり、借入金返済の安全性を測る指標として用いられます。この比率が大きいほど、キャッシュフローに余裕があり、返済リスクが低いといえます。


デュー・デリジェンスについて

 
デュー・デリジェンスとは、投資対象に関するリスクを分析するため、経済的・法的・物理的側面などを専門家が詳細に調査することを指します。不動産取引におけるデュー・デリジェンスは、法律的・経済的側面を中心に、多角的かつ詳細な調査を行うプロセスです。


不動産投資信託について

 
不動産などで運用する投資信託を不動産投資信託(REIT)といいます。日本における不動産投資信託はJ-REITと呼ばれ、投資法人の形態で設定され、証券取引所に上場しています。
 

J-REITの特徴

 

  • 不動産投資の専門家が複数の物件に投資・運用するため、リスク分散が可能。
  • 証券会社を通じて自由に売買できるため、流動性が高い。
  • 多数の物件の賃料や売却代金が分配金の原資となるため、安定した分配金と比較的高い利回りを期待できる。
  • 運用期間中は元本の払戻しを行わないクローズドエンド型の換金方式。

 

税務上の取り扱い

 
個人が受け取る分配金は配当所得として扱われ、原則として上場株式等の配当所得とほぼ同じ課税方式が適用されます(配当控除は適用されません)。また、譲渡益は譲渡所得として扱われ、上場株式等の譲渡所得と同様の課税方式が適用されます。