公的医療保険の分類について
公的医療保険には、自営業者や無職の人、その世帯に属する人など、他の医療保険制度に加入していない人を対象とする国民健康保険と、会社員や公務員などの被用者およびその被扶養者が加入する被用者保険があります。
なお、被用者保険には、民間企業に勤める会社員などとその被扶養者を対象とする健康保険、ならびに国家公務員、地方公務員、私立学校教職員とその被扶養者を対象とする共済組合等があります。
さらに、原則として75歳以上の人を対象とする後期高齢者医療制度があります。
日本国内に住所を有する人は、原則としていずれかの公的医療保険に加入することが義務付けられており、この仕組みを「国民皆保険制度」と呼びます。
公的医療保険制度を整理すると、以下のとおりです。
| 制度名 | 被用者保険 |
地域保険 |
後期高齢者医療制度 |
|
| 健康保険 | 共済組合等 | 国民健康保険 |
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| 加入者 |
会社員等とその被扶養者 |
公務員等とその被扶養者 |
自営業者や無職の人およびその世帯に属する人 |
75歳以上の人 ※ |
| 保険者 |
全国健康保険協会または健康保険組合 |
共済組合等 |
都道府県と市区町村(共同保険者)または国民健康保険組合 |
後期高齢者医療広域連合 |
※65歳以上75歳未満で一定の障害がある人は、申請により後期高齢者医療制度に加入することができます。
健康保険について
健康保険とは、会社などで働く人(被保険者)およびその家族(被扶養者)が、病気やけが、死亡、出産などの事由が生じた場合に医療給付や各種手当金を受けることにより、生活の安定を図ることを目的とした公的医療保険制度です。
健康保険の被保険者の要件
健康保険の被保険者となるための主な要件は、以下のとおりです。
- 1週間の所定労働時間および1か月間の所定労働日数が、同一事業所に使用される通常の労働者の4分の3以上であること。
上記に該当しない場合は、以下のすべての要件を満たす必要があります。
- 所定労働時間が週20時間以上であること(月単位・年単位で定められている場合は、週単位に換算)
- 所定内賃金が月額88,000円以上であること(この要件は2028年6月までに撤廃予定)
所定内賃金は、基本給および諸手当の金額で判断し、以下の賃金は含まれません。 - 結婚手当などの臨時的な賃金
- 賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金
- 通勤手当、家族手当など、最低賃金法において賃金に含まれないとされるもの
- 雇用期間が2か月を超えて見込まれること
- 学生でないこと
ただし、以下の学生は対象となります。 - 通信制課程の在学生
- 夜間学部・定時制課程の在学生
- 休学中の者
- 特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤務していること
特定適用事業所とは、事業主が同一である一つまたは複数の適用事業所において、短時間労働者を除いた被保険者の総数が常時50人を超える事業所を指します。
なお、この企業規模要件は段階的に引き下げられ、2035年10月に撤廃される予定です。
ここでいう「事業主が同一である一つまたは複数の適用事業所」とは、法人事業所の場合は法人番号が同一である本社、支社、工場、営業所などすべての適用事業所を含みます。これらの事業所で働く被保険者数を合算して判断します。
個人事業所の場合は、同一の個人事業主が経営する複数の事業所に勤務する被保険者数を合算して判断します。
また、国に属する事業所および地方公共団体に属する事業所については、規模にかかわらず特定適用事業所として取り扱われます。
一方、任意特定適用事業所とは、特定適用事業所以外の適用事業所であって、厚生年金保険の被保険者、70歳以上の被用者、ならびに短時間労働者の過半数の労使合意に基づき、短時間労働者を健康保険および厚生年金保険の適用対象とする旨の申出を行った事業所を指します。
特定適用事業所となった後に、短時間労働者を除いた被保険者の総数が一定数を下回った場合でも、原則として当該事業所は引き続き特定適用事業所とみなされます。
ただし、厚生年金保険の被保険者、70歳以上の被用者、短時間労働者の4分の3以上の同意を得たうえで、事業主が不該当の届出を行うことが可能です。
任意特定適用事業所についても同様に、4分の3以上の同意に基づき、特定適用事業所の取消しを申し出ることができます。
健康保険の被扶養者の要件
健康保険の被扶養者となるための主な要件は、以下のとおりです。
- 被保険者の同一生計である親族(事実婚関係にある者を含む)であること
- 日本国内に住所を有すること
- 年収が130万円未満(60歳以上または一定の障害がある場合は180万円未満)であること
- 同居している場合は、被扶養者の年収が被保険者の年収の2分の1未満であること
- 別居している場合は、被保険者からの仕送り額よりも年収が少ないこと
健康保険の保険者
健康保険の保険者には、以下の2種類があります。
全国健康保険協会が保険者となる「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」は、自社に健康保険組合を設けていない企業の従業員およびその被扶養者が加入します。加入や脱退などの手続きは、事業所を管轄する年金事務所等で行います。
企業単独、または複数企業が共同で設立・運営する健康保険組合が保険者となる「組合管掌健康保険(組合健保)」には、当該企業の従業員およびその被扶養者が加入します。加入や脱退などの手続きは、各健康保険組合が窓口となります。
健康保険の保険料
健康保険の加入者は、保険給付の財源として保険料を負担します。保険料には、以下の2種類があります。
- 一般保険料:健康保険事業に係る保険料
- 介護保険料:40歳以上65歳未満の被保険者が負担する、介護保険事業に係る保険料
保険料は、被保険者の報酬および賞与を基に計算・徴収されます。
毎月の保険料は標準報酬月額を基礎として計算されます。標準報酬月額とは、被保険者が受け取る月額報酬を全50等級のいずれかに区分したものです。
賞与に係る保険料は、標準賞与額を基礎として計算されます。標準賞与額とは、賞与額から1,000円未満を切り捨てた額をいいます。
なお、標準賞与額の年度累計(4月1日から翌年3月31日まで)には573万円の上限があり、この上限を超える部分には保険料はかかりません。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の一般保険料率は都道府県ごとに設定されており、介護保険料率は全国一律です。保険料は、事業主と被保険者が折半して負担します。
健康保険組合(組合健保)の一般保険料率については、組合規約により事業主と被保険者の負担割合を定めることができます。
また、以下の期間については、事業主の申出により、被保険者負担分および事業主負担分の保険料が免除されます。
- 産前産後休業期間
- 満3歳未満の子を養育するための育児休業等期間
健康保険の給付の種類について
健康保険には、被保険者および被扶養者に対して、以下ような給付があります。
| 給付の区分 |
給付の種類 |
|
| 被保険者 |
被扶養者 |
|
| 保険証による治療 |
療養の給付 |
家族療養費 |
| 立替払い時 |
療養費 |
家族療養費 |
| 緊急移送時 |
移送費 |
家族移送費 |
| 療養による休業時 |
傷病手当金 |
ー |
| 出産時 |
出産育児一時金 |
家族出産育児一時金 |
| 死亡時 |
埋葬料 |
家族埋葬料 |
| 退職時 |
傷病手当金 |
ー |
療養の給付(家族療養費)
医療機関において、診察、薬の処方、治療材料の支給、手術などの医療サービスを、一定の自己負担で受けることができます。
ただし、以下のような医療行為は給付の対象外となります。
- 人間ドックなどの検査
- 美容を目的とした施術(例:二重まぶたの手術、歯列矯正)
- 正常な出産(異常分娩の場合は、給付の対象となることがあります)
入院時食事療養費(家族療養費)
入院中の食事については、1食あたり定額の自己負担で給付が受けることができます。
入院時生活療養費(家族療養費)
65歳以上の方が医療療養病床に入院した場合、定額の自己負担額を超える部分について、生活療養費(食費および水道光熱費)が支給されます。
保険外併用療養費
先進医療や差額ベッド代など、健康保険が適用されない診療(全額自己負担)を受けた場合であっても、通常の治療部分については健康保険が適用されます。
この場合、保険が適用される部分について、保険外併用療養費が支給されます。
訪問看護療養費(家族訪問看護療養費)
自宅で療養する場合、一定の自己負担で訪問看護サービスを受けることができます。
この費用の一部が、訪問看護療養費(家族訪問看護療養費)として支給されます。
療養費(家族療養費)
緊急時や旅行先などで、健康保険証を提示できず、全額自己負担で診療を受けた場合でも、後日申請を行うことで、保険適用分の費用が療養費(家族療養費)として払い戻されます。
なお、申請の際には、領収書などの証明書類が必要です。
高額医療費
医療費の自己負担額が一定の限度額を超えた場合、その超過分が高額医療費として支給されます。
ただし、入院時の食事代や差額ベッド代(特別室料など)は、高額医療費の支給対象外です。
自己負担限度額は、年齢(70歳未満・70歳以上)および所得区分に応じて異なります。
原則として、医療費を支払った後に申請することで、高額医療費の支給を受けることができます。
ただし、70歳未満の方および70歳以上の低所得者または現役並み所得者の一部については、事前に限度額適用認定証を保険者へ申請・取得し、医療機関の窓口で提示することで、自己負担額を自己負担限度額までに抑えることができます。
なお、70歳以上の一般所得者については、認定証がなくても保険証の提示により、限度額を超える支払いは不要です。
また、同一世帯において、直近12か月以内に高額医療費の支給が3回以上あった場合、4回目以降は自己負担限度額が軽減されます。これを「多数該当」といいます。
70歳未満の方の自己負担限度額
| 所得区分 |
自己負担限度額 |
多数該当時 |
| 健保:標準報酬月額83万円以上 |
252,600円 + ( 総医療費 − 842,000円 ) × 1% |
140,100円 |
| 健保:標準報酬月額53〜79万円 |
167,400円 + ( 総医療費 − 558,000円 ) × 1% |
93,000円 |
| 健保:標準報酬月額28〜50万円 |
80,100円 + ( 総医療費 − 267,000円 ) × 1% |
44,400円 |
| 健保:標準報酬月額26万円以下 |
57,600円 |
44,400円 |
| 低所得者(住民税非課税世帯に属する人等) |
35,400円 |
24,600円 |
※「旧ただし書き所得」とは、前年の総所得金額に山林所得、株式の配当所得、土地・建物などの譲渡所得等を加えた金額から、基礎控除(33万円)を差し引いた額をいいます。ただし、雑損失の繰越控除額は控除対象外です。
70歳以上の方の自己負担限度額
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所得区分
|
自己負担限度額
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|||
|
外来(個人)
|
外来・入院(世帯)
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多数該当時
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現役並み所得者
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健保:標準報酬月額83万円以上 国保・後期:旧ただし書き所得690万円以上 |
252,600円 + ( 総医療費 − 842,000円 ) × 1%
|
140,100円
|
|
|
健保:標準報酬月額53〜79万円 国保・後期:旧ただし書き所得380万円以上 |
167,400円 + ( 総医療費 − 558,000円 ) × 1%
|
93,000円
|
||
|
健保:標準報酬月額28〜50万円 国保・後期:旧ただし書き所得145万円以上 |
80,100円 + ( 総医療費 − 267,000円 ) × 1%
|
44,400円
|
||
|
一般所得者
|
健保:標準報酬月額26万円以下 国保・後期:旧ただし書き所得145万円未満 |
18,000円(年間上限144,000円)
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57,600円 |
44,400円
|
|
低所得者
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住民税非課税世帯に属する
|
8,000円 |
24,600円
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−
|
|
住民税非課税世帯に属し、かつ所得が一定基準未満
|
8,000円
|
15,000円
|
−
|
|
※「旧ただし書き所得」とは、前年の総所得金額に山林所得、株式の配当所得、土地・建物などの譲渡所得等を加えた金額から、基礎控除(33万円)を差し引いた額をいいます。ただし、雑損失の繰越控除額は控除対象外です。
さらに、複数人が同一月に同一世帯で医療を受けた場合、以下の条件により自己負担額を合算できます。
| 世帯合算(70歳未満のみ) |
21,000円以上の自己負担があるものを合算 |
| 世帯合算(70歳以上75歳未満) |
すべての自己負担額を合算可能 |
| 混在世帯合算(70歳未満と70歳以上75歳未満) |
70歳未満は21,000円以上の自己負担を合算、70歳以上75歳未満はすべて合算 |
また、血友病、人工透析を必要とする慢性腎不全、抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群(HIV等)に該当する方は、特定疾病療養受療証を医療機関に提示することで、自己負担限度額は月額10,000円となります。
ただし、人工透析を必要とする慢性腎不全について、70歳未満の上位所得者(標準報酬月額53万円以上、旧ただし書き所得600万円超)の場合は、自己負担限度額は月額20,000円となります。
高額介護合算療養費
高額介護合算療養費とは、同一世帯内の同一医療保険加入者に介護保険の受給者がいる場合に適用される制度です。
毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間において、医療保険および介護保険の自己負担額を合算し、その額が下表の自己負担限度額を超えた場合、超過分が支給されます。
このうち、医療保険分は高額介護合算療養費として、介護保険分は高額医療合算介護サービス費または高額医療合算介護予防サービス費として、それぞれ支給されます。
なお、自己負担限度額は、世帯の年齢構成および所得区分に応じて異なります。
|
所得区分
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自己負担限度額
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70歳未満のみの世帯
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70〜74歳の人がいる世帯
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現役並み所得者
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健保:標準報酬月額83万円以上 国保・後期:旧ただし書き所得690万円以上 |
212万円
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健保:標準報酬月額53〜79万円 国保・後期:旧ただし書き所得380万円以上 |
141万円
|
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|
健保:標準報酬月額28〜50万円 国保・後期:旧ただし書き所得145万円以上 |
67万円
|
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一般所得者
|
健保:標準報酬月額26万円以下 国保・後期:旧ただし書き所得145万円未満 |
60万円
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56万円
|
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低所得者
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住民税非課税世帯に属する人
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34万円
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31万円
|
|
住民税非課税世帯に属し、かつ所得が一定基準未満
|
19万円
|
||
※「旧ただし書き所得」とは、前年の総所得金額に山林所得、株式の配当所得、土地・建物などの譲渡所得等を加えた金額から、基礎控除(33万円)を差し引いた額をいいます。ただし、雑損失の繰越控除額は控除対象外です。
移送費(家族移送費)
診察を受けるために病院などへ移送された場合において、その移送が医療上必要であると認められたときは、移送に要した費用が移送費(家族移送費)として支給されます。
傷病手当金
被保険者が、業務外の病気やけがにより仕事を連続して3日以上休業し、かつ報酬を受けられない場合には、4日目から傷病手当金が支給されます。
なお、連続して休業する3日間は「待機」といい、有給休暇や公休日は待機に含まれます。
傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算して最長1年6か月です。なお、自宅療養期間も支給対象となります。
1日あたりの支給額は、以下の計算式により計算されます。
1日あたりの支給額 = 支給開始日以前12か月間の各月の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 2/3
出産育児一時金(家族出産育児一時金)
出産育児一時金(家族出産育児一時金)は、出産に要する費用の一部を支援するための制度です。支給額は、出産を行う医療機関が「産科医療補償制度」に加入しているかどうかによって異なります。
- 産科医療補償制度に加入している医療機関で出産した場合
1児につき500,000円が支給されます。 - 産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産した場合
1児につき488,000円が支給されます。
産科医療補償制度とは、医療機関などが任意で加入する制度です。この制度に加入している医療機関で対象となる出産を行い、万が一、分娩時の何らかの理由により子どもが重度の脳性まひとなった場合、制度に基づき家族の経済的負担が補償されます。
出産育児一時金の支給額は、以下のように覚えましょう!
出産手当金
出産のために会社を休み、給与の支払いを受けられない場合には、健康保険から出産手当金が支給されます。
1日あたりの支給額は、以下の式により計算されます。
1日あたりの支給額 = 支給開始日以前12か月間の各月の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 2/3
支給期間は、以下のとおりです。
- 単胎妊娠の場合
出産予定日の42日前から、出産日の翌日以降56日間 - 多胎妊娠の場合
出産予定日の98日前から、出産日の翌日以降56日間
出産手当金の支給期間は、以下のように覚えましょう!
埋葬料(家族埋葬料)
被保険者または被扶養者が死亡した場合には、原則として一律50,000円が、埋葬料(家族埋葬料)として支給されます。
健康保険の任意継続被保険者制度について
会社などを退職すると、退職日の翌日から健康保険の被保険者資格を自動的に喪失します。
ただし、一定の要件を満たす場合には、退職後も最大2年間、退職前に加入していた健康保険を継続できる任意継続被保険者制度を利用することができます。
任意継続の要件
任意継続被保険者となるためには、次の要件を満たす必要があります。
- 退職日までに、継続して2か月以上健康保険の被保険者であったこと
- 退職日の翌日(資格喪失日)から20日以内に申請すること
保険料
任意継続被保険者の保険料は、全額自己負担となります。
保険料は、納付期限までに、本人が直接納付する必要があります。
保険料の算定基準
保険料の算定に用いられる標準報酬月額は、次のいずれか低い方が適用されます。
- 退職時の標準報酬月額
- 原則として、退職前に加入していた健康保険における全被保険者の前年の標準報酬月額の平均額
資格喪失の事由
任意継続被保険者の資格は、次のいずれかに該当した場合に喪失します。
- 資格取得日から2年が経過したとき
- 毎月の保険料を納付期限までに納付しなかったとき
- 就職などにより、新たに健康保険の被保険者となったとき
- 被保険者が、死亡したとき
- 被保険者が、後期高齢者医療制度の被保険者となったとき
- 被保険者が、任意継続を希望しない旨を申し出たとき
なお、被保険者が任意で資格喪失を希望する場合には、「健康保険被保険者資格喪失申請書」の提出が必要です。
申請書が全国健康保険協会または健康保険組合に受理された月の翌月1日が、資格喪失日となります。
健康保険の任意継続被保険者制度は、以下のように覚えましょう!
国民健康保険について
国民健康保険は、健康保険や共済組合などの被用者保険に加入していない人(自営業者、退職者、無職の人およびその家族など)を対象とした医療保険制度です。病気やけが、出産、死亡などの際に必要な給付を行い、生活の安定を図ることを目的としています。
なお、国民健康保険には「被扶養者」という区分はなく、加入者はすべて個別に「被保険者」として扱われます。
国民健康保険の保険者
国民健康保険の保険者には、都道府県と市区町村が共同で運営する国民健康保険と、国民健康保険組合の2種類があります。
前者は、地域住民を対象として、都道府県と市区町村が共同で保険制度を管理・運営する形態です。
一方、国民健康保険組合は、弁護士、医師、美容師など、同一の職業に従事する人々が集まって設立した団体であり、自治体が運営する国民健康保険とは別に、組合独自の医療保険制度を運営しています。
国民健康保険の保険料
都道府県および市区町村が運営する国民健康保険の保険料は、所得割や均等割などの方式により算出されます。保険料率は市区町村ごとに定められており、地域によって負担額に差があります。
一方、国民健康保険組合が運営する保険料については、各組合が独自に定めており、保険料の額や算定方法は組合ごとに異なります。
なお、国民健康保険の保険料は、すべて加入者本人が負担する仕組みとなっており、事業主による保険料負担はありません。
国民健康保険の給付の種類について
国民健康保険の保険給付は、個々の被保険者に対して直接支給されるのではなく、原則として世帯主または国民健康保険組合の組合員に対して支給されます。
給付には、法律により支給が義務付けられている「法定給付」と、市区町村の条例または国民健康保険組合の規約に基づいて支給される「任意給付」があります。
さらに、法定給付は、保険者が必ず支給しなければならない「絶対的必要給付」と、特別な事情がある場合には支給しなくてもよい「相対的必要給付」に区分されます。
具体的な給付の種類は、以下のとおりです。
| 区分 |
給付の種類 |
|
| 法定給付 |
絶対的必要給付 |
療養の給付 |
| 相対的必要給付 |
出産育児一時金 |
|
| 任意給付 |
ー |
傷病手当金 |
なお、国民健康保険では、健康保険と異なり、傷病手当金や出産手当金は原則として支給されません。
後期高齢者医療制度について
後期高齢者医療制度は、75歳以上の人(一定の障害認定を受けている場合は65歳以上)を対象とした医療制度です。この制度は、都道府県単位で設置された後期高齢者医療広域連合によって運営されています。
原則として、75歳に達すると、それまで加入していた健康保険等の公的医療保険制度における被保険者または被扶養者としての資格を喪失し、代わって後期高齢者医療制度の被保険者となります。
なお、この制度には、健康保険における被扶養者の仕組みはありません。
後期高齢者医療制度の保険料
後期高齢者医療制度では、すべての被保険者が保険料を負担します。保険料は一律ではなく、都道府県ごとに設置された後期高齢者医療広域連合が定める保険料率に基づいて算定されます。
年額18万円以上の公的年金を受給している人については、原則として、保険料が年金から自動的に差し引かれる特別徴収の対象となります。
ただし、介護保険料と後期高齢者医療保険料を合算した額が、年金額の2分の1を超える場合は、特別徴収の対象外となります。
それ以外の人については、市区町村を通じて、口座振替や納付書により保険料を納める普通徴収となります。
医療費の自己負担割合について
健康保険および国民健康保険における医療費の自己負担割合
健康保険および国民健康保険における医療費の自己負担割合は、年齢および所得状況に応じて異なります。
| 被保険者・被扶養者の年齢 | 区分 | 自己負担割合 |
| 6歳未満(小学校入学前) |
− |
2割 |
| 6歳以上(小学校入学後)70歳未満 |
− |
3割 |
| 70歳以上75歳未満 |
一般の所得者 |
2割 |
| 現役並み所得者 |
3割 |
70歳以上75歳未満の人で、医療費の自己負担割合が3割となる「現役並み所得者」とは、以下の両方の条件を満たす人を指します。
- 同一世帯内に、住民税課税所得が145万円以上の人がいること。
- 世帯年収が、単身世帯で383万円以上、または複数世帯で520万円以上であること。
後期高齢者医療制度における医療費の自己負担割合
後期高齢者医療制度における医療費の自己負担割合は、以下のとおりです。
| 被保険者・被扶養者の年齢 | 区分 | 自己負担割合 |
| 75歳以上 |
一般の所得者 |
1割 |
| 一定以上所得のある人 |
2割 |
|
| 現役並み所得者 |
3割 |
医療費の自己負担割合が2割となる「一定の所得がある人」とは、以下の条件を満たす人です。
- 同一世帯内に、住民税課税所得が28万円以上の人がいること。
- 世帯の「年金収入 + その他の合計所得金額」が、単身世帯で200万円以上、または複数世帯で320万円以上であること。
さらに、医療費の自己負担額が3割となる 「現役並み所得者」は、以下の条件を満たす人です。
- 同一世帯内に、住民税課税所得が145万円以上の人がいること。
- 世帯年収が、単身世帯で383万円以上、または複数世帯で520万円以上であること。
マイナ保険証について
2024年12月2日から、健康保険被保険者証(国民健康保険加入者は国民健康保険被保険者証、後期高齢者医療制度加入者は後期高齢者医療被保険者証)は廃止され、マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」へ移行しました。
これに伴い、新規の被保険者証の発行は行われていません。
なお、すでに発行されていた被保険者証等は、2025年12月1日まで経過措置として使用可能でしたが、同日をもって経過措置は終了し、以降はマイナ保険証が本格的に運用されています。
マイナ保険証とは、マイナンバーカードに健康保険証の利用登録を行ったものであり、従来の保険証よりも利便性の高い仕組みとなっています。
マイナ保険証のメリット
マイナ保険証の主なメリットは、以下のとおりです。
- 診療情報の共有
受付時に情報提供へ同意することで、過去に他の医療機関や薬局で処方された薬剤情報や健診結果を、医師や薬剤師と共有することができます。 - 高額医療費の手続き簡略化
高額な医療費が発生する場合でも、窓口での一時的な自己負担や事前の書類申請が不要となります。 - 医療費控除の簡単申請
医療費の領収書の保管・提出が不要となり、マイナポータルを利用して確定申告における医療費控除の手続きを簡単に行うことができます。 - 救急時の迅速な対応
マイナンバーカードを携帯していれば、救急隊員が診療情報や服薬情報を参照できるため、搬送中の応急処置や医療機関の選定を適切に行うことができます。
マイナ保険証の登録方法
マイナンバーカードへの健康保険証利用登録は、次の方法で行うことができます。
- 病院や薬局などの医療機関等の窓口に設置された顔認証付きカードリーダー
- マイナポータル
- 一部の銀行ATM
また、2025年9月19日からは、健康保険証を登録したマイナンバーカードをスマートフォンに追加することで、カードを取り出すことなく、スマートフォンをかざして医療機関や薬局で利用できるようになりました。
なお、スマートフォンに追加した場合でも、実物のマイナンバーカードは引き続き利用可能です。
電子証明書の有効期限
マイナンバーカードには、次の2種類の有効期限があります。
- カード本体:発行から10年(18歳未満は5年)
- 電子証明書:発行から5年
いずれも更新が必要です。
電子証明書の有効期限が切れている場合、マイナ保険証を利用することができなくなるため、有効期限の確認と更新は重要です。
電子証明書の有効期限は、マイナンバーカードの券面またはマイナポータルで確認できます。
有効期限の2~3か月前を目安に、「有効期限通知書」が同封された封筒が自宅に送付されてくるので、住んでいる市区町村窓口で更新手続きを行います。
なお、猶予期間として、有効期限満了月の末日から3か月間は、マイナ保険証による受診が可能です。
ただし、この期間中は保険資格情報のみが提供され、診療情報や薬剤情報の提供は行われません。
資格確認書
資格確認書は、マイナ保険証の利用登録をしていない人や、マイナンバーカードを持っていない人など、マイナ保険証で受診できない場合に加え、資格確認に際して家族や介助者の同行が必要な人を対象に発行されます。
| 入手方法 |
資格取得届または扶養異動届の「資格確認書発行要否」欄にチェックを入れた人、もしくは資格確認書交付申請を行なった人に交付されます。 |
| 使用方法 |
医療機関等の窓口に提示して使用します。 |
資格情報のお知らせ
資格情報のお知らせは、健康保険の各種給付申請や健診を受ける際に必要な記号・番号をお知らせするためのものです。
機器のトラブル等によりマイナ保険証が利用できない場合には、「資格情報のお知らせ」とマイナンバーカードを併せて提示することで受診が可能です。
| 入手方法 |
資格取得時などに申請不要で交付されます。なお、マイナポータルで取得できる「医療保険の資格情報」でも代用可能です。 |
| 使用方法 |
「資格情報のお知らせ」とマイナンバーカードを併せて医療機関等の窓口に提示して使用します。 |