確定拠出年金とは?FPがわかりやすく解説
確定拠出年金とは
確定拠出年金とは、加入者が拠出した掛金を自ら運用し、その運用成果に応じて将来受け取る年金額や給付額が決まる制度です。掛金は加入者ごとに管理されており、運用成果によって将来の受取額が変動します。
確定拠出年金には、事業主が掛金を拠出する「企業型確定拠出年金(企業型DC)」と、加入者本人が掛金を拠出する「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の2種類があります。企業型DCでは、規約に基づき加入者自身が事業主掛金に上乗せして掛金を拠出できる場合があります。
確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の加入対象者と加入条件
確定拠出年金には、企業型確定拠出年金(企業型DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)の2種類があり、それぞれ加入できる対象者や加入条件が異なります。
| 確定拠出年金 |
加入対象者 |
備 考 |
| 企業型DC | 企業型DC制度を導入している企業に勤務する従業員 |
加入対象となる範囲は企業ごとに定められており、勤務先の企業年金規約によって異なる場合があります。 |
| iDeCo |
国民年金の第1号被保険者(自営業者とその家族、フリーランス、学生など) |
ただし、次の方は原則として加入できません。 |
| 国民年金の第2号被保険者(会社員、公務員など) | ただし、勤務先で企業型DCに加入している方のうち、次のいずれかに該当する場合は加入できません。 ・企業型DCの事業主掛金が年単位で拠出されている方 ・企業型DCでマッチング拠出(加入者が事業主掛金に上乗せして掛金を拠出する制度)を利用している方 |
|
| 国民年金の第3号被保険者(主に会社員や公務員に扶養されている配偶者) |
ー |
|
| 国民年金の任意加入被保険者 |
次のいずれかに該当する方が対象です。 |
確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の掛金と拠出限度額
企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛金
企業型確定拠出年金(企業型DC)では、原則として事業主が掛金を拠出します。
ただし、企業年金規約で定められている場合は、加入者が事業主掛金に上乗せして掛金を拠出することができます。この制度を「マッチング拠出」といいます。
マッチング拠出を行う場合は、次の条件を満たす必要があります。
- 事業主掛金と加入者掛金の合計額が拠出限度額の範囲内であること
- 加入者掛金の額が事業主掛金の額を超えないこと
個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金
個人型確定拠出年金(iDeCo)では、加入者自身が掛金を拠出します。
掛金は月額5,000円以上1,000円単位で設定でき、年に1回まで掛金額を変更することができます。
また、掛金の上限額は、加入者の職業や加入している年金制度によって異なります。
確定拠出年金の拠出限度額一覧
| 区分 |
条件 |
月額上限 |
年額上限 |
| 企業型DC |
企業型DCのみに加入 |
55,000円 |
660,000円 |
| 確定給付企業年金(DB)など他制度と併用 |
55,000円 − 他制度掛金相当額 |
660,000円 |
|
| iDeCo |
国民年金の第1号被保険者・任意加入被保険者 |
68,000円 |
816,000円 |
| 厚生年金保険の被保険者(企業型DC・他制度に未加入) |
23,000円 |
276,000円 |
|
| 厚生年金保険の被保険者(企業型DC・他制度に加入) |
20,000円 |
240,000円 |
|
| 厚生年金保険の被保険者(企業型DCのみ加入) |
|||
| 厚生年金保険の被保険者(他制度のみ加入) |
|||
| 国民年金の第3号被保険者 |
23,000円 |
276,000円 |
※「他制度」とは、確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、私立学校教職員共済制度、石炭鉱業年金基金などを指します。
iDeCo+(イデコプラス)とは
iDeCo+(イデコプラス)は、正式名称を「中小事業主掛金納付制度」といいます。
企業型確定拠出年金(企業型DC)や確定給付企業年金(DB)などの企業年金制度を導入していない中小企業の事業主が、従業員の老後資産形成を支援するために、従業員が拠出するiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金に上乗せして掛金を拠出できる制度です。
対象となるのは、厚生年金保険の被保険者であり、かつiDeCoに加入している従業員です。
なお、iDeCo+を利用しても、従業員本人によるiDeCoへの掛金拠出は継続する必要があります。
事業主の要件
事業主がiDeCo+を導入するためには、次のすべての要件を満たす必要があります。
- 企業型確定拠出年金(企業型DC)、確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金を実施していないこと
- 従業員数300人以下の中小企業であること(複数の事業所がある場合は全事業所の従業員数の合計)
- 事業主払込を行うための登録事業所番号を取得していること
対象となる従業員
対象となるのは、iDeCoに加入している従業員のうち、事業主掛金の上乗せに同意した人です。
なお、事業主がiDeCo+を導入していても、iDeCoへの加入を従業員に強制することはできません。
iDeCo+の掛金
iDeCo+における掛金の取扱いは次のとおりです。
- 加入者掛金と事業主掛金の合計額は、月額5,000円以上23,000円以下
- 加入者掛金、事業主掛金ともに1,000円単位で設定可能
- 事業主掛金は、原則として対象となる従業員全員が同額となるように設定する
- 事業主掛金のみを拠出することはできない
- 事業主掛金が加入者掛金を上回ることは可能
- 加入者掛金と事業主掛金は、事業主が取りまとめて納付する
確定拠出年金の運用
確定拠出年金では、加入者自身が運用商品を選び、その運用成果によって将来受け取る給付額が変わります。
運用商品は、加入手続きを行った運用管理機関(銀行や証券会社などの金融機関)が選定・提示します。運用管理機関ごとに特色のある商品ラインアップが用意されており、加入者または運用指図者(掛金の拠出は行わず、保有資産の運用のみを行う人)が、自らの判断と責任で運用商品を選択します。
運用商品の種類
確定拠出年金で選択できる運用商品は、大きく分けて次の2種類があります。
- 元本確保型商品(定期預金、保険商品など)
元本が保証されている、または元本割れのリスクが極めて低い商品です。価格変動リスクが小さい反面、大きな収益は期待しにくい傾向があります。 - 元本変動型商品(投資信託など)
市場環境や運用成績によって価格が変動する商品です。元本確保型商品に比べて高い収益が期待できる一方、元本割れのリスクがあります。
運用商品の選定ルール
運用管理機関は、法令で定められたルールに基づいて運用商品を提示します。
- 商品数は、3種類以上35種類以下(簡易企業型年金の場合は2種類以上)
- 加入者は複数の商品を組み合わせて運用することができる
- 運用状況やライフプランの変化に応じて、運用商品の配分を変更できる
- 保有している資産を別の商品へ移し替えること(スイッチング)ができる
運用商品を選ぶ際のポイント
運用商品を選ぶ際は、年齢やリスク許容度、老後資金の準備期間などを考慮することが重要です。
例えば、運用期間を長く確保できる若年層は、投資信託などの元本変動型商品を活用して資産の成長を目指す方法が考えられます。一方で、退職が近い方は、元本確保型商品の割合を増やして資産価値の変動リスクを抑える方法もあります。
確定拠出年金は長期運用を前提とした制度であるため、短期的な価格変動に一喜一憂せず、自身の資産配分を定期的に見直しながら運用を続けることが大切です。
確定拠出年金の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)とは
確定拠出年金やその他の私的年金制度では、転職や退職、制度変更があった場合に、それまで積み立てた年金資産を別の年金制度へ移換できる場合があります。
この仕組みを「ポータビリティ(年金資産の持ち運び)」といいます。
ポータビリティにより、転職や退職をしても、それまで積み立てた年金資産を引き継いで運用することが可能です。
主な移換先となる制度は次のとおりです。
- 確定給付企業年金(DB)
- 企業型確定拠出年金(企業型DC)
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 通算企業年金
- 中小企業退職金共済(中退共)
ただし、実際に資産を移換できるかどうかは、各制度の規約や加入状況などによって異なります。
私的年金制度におけるポータビリティの対応状況
以下の表は、転職・退職前に加入していた制度から、転職・退職後に利用する制度への年金資産移換の可否を示したものです。
|
|
離転職先で導入している制度・資産移管先の制度
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|||||
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確定給付企業年金
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企業型確定拠出年金
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個人型確定拠出年金
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通算企業年金
|
中小企業退職金共済
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||
|
離転職前に加入していた制度等 |
確定給付企業年金
|
◯ (※2)
|
◯
|
◯
|
◯
|
△ (※1 ※3)
|
|
△ (※1 ※2)
|
△ (※1)
|
|||||
|
企業型確定拠出年金
|
◯ (※2) |
◯
|
◯
|
◯
|
△ (※3)
|
|
|
個人型確定拠出年金
|
◯ (※2)
|
◯
|
ー
|
×
|
×
|
|
|
通算企業年金
|
◯ (※2)
|
◯
|
◯
|
ー
|
×
|
|
|
中小企業退職金共済
|
△ (※2 ※3)
|
△ (※3)
|
×
|
×
|
◯
|
|
◯:加入者の申出により移換可能
△:事業主の手続きにより移換可能
ー:対象外
×:移換不可
※1:転職前の制度の規約による
※2:転職先の制度の規約による
※3:制度の統合や合併などの場合に限る
ポータビリティを利用する際の注意点
確定拠出年金の資産を移換できるかどうかは、制度間の規約や事業主の対応、制度の統合・合併の有無などによって異なります。
そのため、転職や退職の際には、年金資産をどの制度へ移換できるのか、どのような手続きが必要になるのかを事前に確認しておくことが大切です。
特に企業型DCの加入資格を喪失した場合には、一定期間内に資産移換の手続きを行う必要があります。
自動移換に注意
移換手続きを行わずに所定の期間が経過すると、年金資産は国民年金基金連合会へ自動移換される場合があります。
自動移換された資産には次のようなデメリットがあります。
- 運用が行われないため資産が増えない
- 管理手数料が差し引かれる場合がある
- 自動移換期間は老齢給付金の受給開始要件となる通算加入者等期間に算入されない場合がある
- 将来の受給手続きが複雑になる可能性がある
そのため、転職や退職をした際は、企業型DCやiDeCoへの資産移換手続きをできるだけ早く行うことが重要です。
確定拠出年金の給付内容と受取方法
確定拠出年金には、老齢給付金、障害給付金、死亡一時金、脱退一時金の4種類の給付があります。それぞれの給付には受給要件や受取方法が定められています。
老齢給付金
老齢給付金は、原則として60歳以降に受給できます。ただし、60歳時点で通算加入者等期間が10年以上あることが必要です。
60歳時点で通算加入者等期間が10年未満の場合は、次のように受給開始年齢が繰り下がります。
| 通算加入者等期間 |
受給開始年齢 |
| 10年以上 |
60歳 |
| 8年以上10年未満 |
61歳 |
| 6年以上8年未満 |
62歳 |
| 4年以上6年未満 |
63歳 |
| 2年以上4年未満 |
64歳 |
| 1か月以上2年未満 |
65歳 |
老齢給付金の受取方法は、次の中から選択できます。
- 有期年金(5年以上20年以下)
- 終身年金
- 一時金
ただし、選択できる受取方法は加入している制度や運営管理機関によって異なる場合があります。
障害給付金
障害給付金は、75歳到達前に一定の障害状態となり、その状態が1年6か月以上継続している場合に受給できます。
障害給付金は、所定の障害認定基準を満たしていることが必要です。
老齢給付金と同様に、次の方法で受け取ることができます。
- 有期年金
- 終身年金
- 一時金
死亡一時金
加入者や運用指図者が死亡した場合には、遺族が年金資産残高を死亡一時金として受け取ることができます。
死亡一時金は、あらかじめ指定した死亡一時金受取人、または法令で定められた遺族が受給します。
脱退一時金
確定拠出年金は老後資金形成を目的とした制度であり、原則として60歳までは資産を引き出すことができません。
ただし、次のような要件を満たす場合には、例外的に脱退一時金を受給できることがあります。
ケース①|年金資産額15,000円以下の場合(企業型DC)
- 企業型DCの資格喪失後6か月以内であること
- 加入者または運用指図者でないこと
- 年金資産額が15,000円以下であること
ケース②|年金資産額15,000円超の場合(企業型DC)
- 企業型DCの資格喪失後6か月以内であること
- 加入者または運用指図者でないこと
- 60歳未満であること
- iDeCoに加入できないこと
- 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
- 確定拠出年金の障害給付金の受給権者でないこと
- 掛金拠出期間が5年以下、または年金資産額が25万円以下であること
ケース③|個人型確定拠出年金(iDeCo)の場合
- 60歳未満であること
- 企業型DCの加入者でないこと
- iDeCoに加入できないこと
- 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
- 確定拠出年金の障害給付金の受給権者でないこと
- 掛金拠出期間が5年以下、または年金資産の額が25万円以下であること
- 企業型DCまたはiDeCoの加入者資格を最後に喪失した日から2年以内であること
脱退一時金に関する注意点
脱退一時金は、誰でも請求できるものではなく、受給できるケースは非常に限定されています。
そのため、転職や退職によって確定拠出年金の加入資格を失った場合は、脱退一時金を請求するのではなく、企業型DCやiDeCoへ資産を移換して運用を継続するケースが一般的です。
また、脱退一時金の受給要件は制度改正によって変更される可能性があるため、請求時には最新の制度内容を確認するようにしましょう。
確定拠出年金の税金と控除の仕組み
確定拠出年金では、掛金を拠出するとき(拠出時)・資産を運用しているとき(運用時)・給付を受け取るとき(給付時)のそれぞれの段階で税制上の優遇措置が設けられています。
企業型確定拠出年金(企業型DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)の主な税法上の取扱いは、次のとおりです。
| 企業型確定拠出年金(企業型DC) |
個人型確定拠出年金(iDeCo) |
|
| 拠出時 |
・事業主掛金:全額損金算入(従業員にとって非課税) |
・加入者掛金:全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除) |
| 運用時 |
・運用益は非課税 |
|
| 給付時 |
・年金として受け取る場合:雑所得として課税(公的年金等控除の対象) |
|
老齢給付金以外の給付に係る税務上の取扱い
老齢給付金以外の給付については、次のように取り扱われます。
- 障害給付金:非課税
- 死亡一時金:相続税の課税対象(みなし相続財産)
- 脱退一時金:原則として一時所得として課税
確定拠出年金の税制メリット
確定拠出年金の大きな特徴は、「拠出時」「運用時」「受取時」の各段階で税制優遇を受けられることです。
例えばiDeCoでは、拠出した掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となるため、課税所得を減らすことができます。その結果、所得税や住民税の負担軽減が期待できます。
また、通常は投資信託などの運用益に対して約20%の税金がかかりますが、確定拠出年金では運用益が非課税となるため、長期間の資産形成において大きなメリットがあります。
さらに、受取時には公的年金等控除や退職所得控除を利用できるため、税負担を抑えながら老後資金を受け取ることができます。
FP試験での出題ポイント
FP試験では、次のポイントを重点的に押さえておくと得点源になります。
① 確定拠出年金の基礎
- 確定拠出年金(DC)は「掛金が確定」しており、将来の受取額は運用成果によって変動する
- 企業型確定拠出年金(企業型DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)の違い
- マッチング拠出の仕組みと要件
② 加入対象者・加入条件
- iDeCoに加入できる国民年金第1号・第2号・第3号被保険者
- 任意加入被保険者の加入要件
- 国民年金保険料免除者の取扱い
- 企業型DC加入者がiDeCoに加入できないケース
③ 掛金・拠出限度額
- 被保険者区分ごとの掛金上限額
- 企業型DCと確定給付企業年金(DB)併用時の取扱い
- マッチング拠出の要件
- iDeCoの最低掛金額(5,000円)と拠出単位(1,000円単位)
④ iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)
- iDeCo+の対象企業
- 事業主の加入要件
- 事業主掛金と加入者掛金のルール
- 掛金上限額
⑤ 運用
- 元本確保型商品と元本変動型商品の特徴
- 運用指図者の意味
- スイッチングと配分変更の違い
- 自己責任による運用であること
⑥ ポータビリティ(年金資産の移換)
- 転職・退職時の資産移換(ポータビリティ)
- 企業型DC、iDeCo、DB間の移換可否
- 自動移換の仕組み
- 自動移換によるデメリット
⑦ 給付
- 老齢給付金、障害給付金、死亡一時金、脱退一時金の違い
- 老齢給付金の受給開始年齢
- 通算加入者等期間と受給開始年齢の関係
- 脱退一時金の受給要件
⑧ 税制
- 拠出時・運用時・給付時の税制優遇
- 小規模企業共済等掛金控除
- 運用益非課税
- 年金受取時の公的年金等控除
- 一時金受取時の退職所得控除
- 障害給付金・死亡一時金・脱退一時金の税務上の取扱い