確定給付企業年金とは?FPがわかりやすく解説
確定給付企業年金とは
確定給付企業年金(DB:Defined Benefit Plan)とは、企業があらかじめ将来の給付内容を定め、その内容に基づいて従業員に年金を支給する企業年金制度です。運用実績が想定を下回った場合でも、原則として企業が不足分を負担するため、従業員にとっては将来の受取額が比較的安定していることが特徴です。
確定給付企業年金には、主に次の2つの実施形態があります。
規約型確定給付企業年金
規約型確定給付企業年金は、企業と従業員の合意に基づいて作成した年金規約について、厚生労働大臣の承認を受けて実施する制度です。
企業は信託会社や生命保険会社などと契約を締結し、年金資産を企業の外部で管理・運用します。そして、その資産をもとに従業員へ年金給付を行います。
規約型確定給付企業年金には加入者数に関する要件がなく、企業年金基金を設立する必要もないため、比較的小規模な企業でも導入しやすいという特徴があります。
基金型確定給付企業年金
基金型確定給付企業年金は、企業と従業員の合意に基づいて年金規約を作成し、厚生労働大臣の認可を受けて設立された企業年金基金により運営される制度です。
企業年金基金は母体企業とは別の法人格を持ち、年金資産の管理・運用および年金給付を行います。
企業年金基金を設立するためには、原則として加入者数が300人以上必要です。ただし、複数の厚生年金適用事業所が共同で基金を設立する場合は、加入者数の合計が300人以上であれば認可を受けることができます。
確定給付企業年金の掛金
確定給付企業年金の掛金は、原則として事業主(企業)が負担します。
ただし、年金規約に定めがあり、加入者本人の同意を得ている場合には、掛金の一部を加入者が負担することも可能です。これを加入者掛金といいます。
なお、加入者が負担できる掛金額は、事業主が負担する掛金額を超えることはできず、事業主掛金の2分の1を上限とすることとされています。
このように、確定給付企業年金は原則として企業が掛金を負担する制度ですが、制度設計によっては従業員も掛金の一部を負担する場合があります。
確定給付企業年金の給付内容と受取方法
確定給付企業年金では、主に次の給付が行われます。
老齢給付金
老齢給付金は、加入者が一定の年齢に達した場合や、規約で定められた受給要件を満たした場合に支給される給付です。
脱退一時金
脱退一時金は、加入者が退職などにより確定給付企業年金制度から脱退した際に、一定の要件を満たした場合に支給される一時金です。
障害給付金
障害給付金は、加入者が一定の障害状態になった場合に支給される給付です。ただし、すべての確定給付企業年金で実施されるわけではなく、年金規約に定めがある場合に支給されます。
遺族給付金
遺族給付金は、加入者または受給権者が死亡した場合に、その遺族に対して支給される給付です。障害給付金と同様に、年金規約に定めがある場合に支給されます。
給付金の受取方法
老齢給付金、障害給付金および遺族給付金は、年金規約の定めにより、年金形式または一時金形式で受け取ることができます。
年金形式は複数年にわたって定期的に受け取る方法であり、一時金形式は給付金をまとめて一括で受け取る方法です。なお、具体的な受取方法や受給要件は、各企業の年金規約によって異なります。
確定給付企業年金の税金と控除の仕組み
確定給付企業年金では、掛金を拠出する際と給付金を受け取る際に、それぞれ税制上の取扱いが定められています。
掛金の取扱い
事業主が負担した掛金
事業主が負担した掛金は、法人税法上、損金に算入することができます。
加入者が負担した掛金(加入者掛金)
加入者が負担した掛金は、生命保険料控除の対象となります。
給付金の取扱い
老齢給付金(年金形式)
老齢給付金を年金形式で受け取る場合は、雑所得として課税され、公的年金等控除の対象となります。
老齢給付金(一時金形式)
老齢給付金を一時金形式で受け取る場合は、退職所得として課税され、退職所得控除の適用を受けることができます。
脱退一時金
脱退一時金は、原則として加入者の退職に起因して支払われる場合は退職所得となり、それ以外の場合は一時所得として取り扱われます。
障害給付金
障害給付金は、給付形式にかかわらず、原則として非課税となります。
遺族給付金
遺族給付金は、給付形式にかかわらず、相続税法上のみなし相続財産として相続税の課税対象となります。
厚生年金基金とは
厚生年金基金とは、かつて企業が従業員のために設立していた確定給付型の企業年金制度です。
厚生年金基金は、老齢厚生年金の報酬比例部分の一部を国に代わって給付する代行部分と、基金独自の上乗せ給付である加算部分によって構成されていました。
しかし、財政状況の悪化や制度の見直しを背景として、基金の解散や他の企業年金制度への移行が進められています。そのため、2014(平成26)年4月以降は厚生年金基金の新設は認められておらず、現在は確定給付企業年金(DB)などへの移行が進められています。
厚生年金基金の掛金
厚生年金基金の掛金は、原則として従業員(加入者)と事業主が共同で負担していました。また、基金独自の上乗せ給付である加算部分については、規約で定めることにより、事業主の負担割合を高めることが可能でした。
厚生年金基金の給付
厚生年金基金では、老齢厚生年金の報酬比例部分に対応する代行部分と、基金独自の加算部分による老齢給付金が支給されていました。また、基金の規約で定めることにより、加入者の死亡や障害に対する給付を行うことも可能とされていました。
FP試験での出題ポイント
FP試験では、次のポイントを重点的に押さえておくと得点源になります。
① 確定給付企業年金(DB)の仕組み
- DB(Defined Benefit Plan)は、将来の給付内容をあらかじめ定める企業年金制度
- 運用リスクは原則として事業主(企業)が負担する
- 企業型DC(確定拠出年金)は運用リスクを加入者が負担する
- DBには「規約型」と「基金型」の2種類がある
- 規約型は企業年金基金の設立が不要
- 基金型は企業年金基金を設立して運営する
- 基金型の企業年金基金は独立した法人格を持つ
- 基金型の設立には原則300人以上の加入者が必要
- 複数事業所による共同設立では加入者数を合算できる
② 掛金
- DBの掛金は原則として事業主が負担
- 加入者掛金を認めることができる
- 加入者掛金は加入者本人の同意が必要
- 加入者掛金は事業主掛金の2分の1が上限
- 加入者掛金は事業主掛金を超えることはできない
③ 給付
- 給付の種類
- 老齢給付金
- 脱退一時金
- 障害給付金
- 遺族給付金
- 給付方法
- 年金形式
- 一時金形式
④ 税法上の取扱い
- 掛金
- 事業主掛金:法人税法上、損金算入可能
- 加入者掛金:生命保険料控除の対象
- 給付金
- 老齢給付金(年金形式):雑所得、公的年金等控除の対象
- 老齢給付金(一時金形式):退職所得、退職所得控除の対象
- 脱退一時金:退職に起因する場合は退職所得、それ以外の場合は一時所得
- 障害給付金:原則非課税
遺族給付金:みなし相続財産として相続税の対象
⑤ 厚生年金基金
- 厚生年金基金は確定給付型の企業年金制度
- 代行部分と加算部分で構成される
- 代行部分は老齢厚生年金の報酬比例部分の一部
- 加算部分は基金独自の上乗せ給付
- 2014年(平成26年)4月以降は新設不可
- 現在はDB等への移行が進んでいる