老齢基礎年金とは?FPがわかりやすく解説
老齢基礎年金の受給要件(受給資格期間)
老齢基礎年金を受給するためには、受給資格期間が10年以上あることが必要です。
受給資格期間の計算式
受給資格期間 = 保険料納付済期間 + 保険料免除期間 + 合算対象期間(カラ期間)
保険料納付済期間
保険料納付済期間とは、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者として国民年金制度に加入していた期間のうち、保険料を納付したものとして扱われる期間をいいます。
なお、第1号被保険者については、産前産後期間の保険料免除制度を利用した期間も保険料納付済期間として扱われます。
保険料免除期間
保険料免除期間とは、第1号被保険者が法定免除制度や申請免除制度を利用し、保険料の免除を受けた期間をいいます。
また、納付猶予制度や学生納付特例制度を利用した期間も受給資格期間に算入されます。
合算対象期間(カラ期間)
合算対象期間(カラ期間)とは、老齢基礎年金の受給資格期間には算入されるものの、年金額には反映されない特例的な期間をいいます。なお、この期間については保険料の追納はできません。
主な合算対象期間は、次のとおりです。
- 1961(昭和36)年4月から1986(昭和61)年3月までの間に、厚生年金保険の被保険者に扶養される配偶者でありながら、国民年金に任意加入しなかった20歳以上60歳未満の期間
- 1961(昭和36)年4月から1991(平成3)年3月までの間に、学生でありながら国民年金に任意加入しなかった期間
- 1961(昭和36)年4月以降に、海外に居住していたため国民年金に任意加入しなかった20歳以上60歳未満の期間
- 1961(昭和36)年4月以降の厚生年金保険の被保険者期間のうち、20歳未満または60歳以上の期間
老齢基礎年金の受給開始年齢
老齢基礎年金は、受給資格期間が10年以上ある人が65歳に達すると受給権が発生します。 実際に年金を受け取るためには、原則として年金請求手続きが必要です。老齢基礎年金は請求しなければ自動的には支給されません。
なお、老齢基礎年金は原則として65歳から受給しますが、本人の希望により60歳から64歳までの間に受給を開始する「繰上げ受給」や、66歳から75歳までの間に受給を開始する「繰下げ受給」を選択することもできます。
老齢基礎年金の繰上げ受給
老齢基礎年金の繰上げ受給とは、65歳で受給を開始する老齢基礎年金を、60歳から64歳までの間の希望する時期から受給できる制度です。
繰上げ受給を選択すると、受給開始を早めた月数に応じて年金額が減額されます。なお、減額後の年金額は生涯にわたって適用され、原則として変更することはできません。
繰上げによる減額率
減額率は次のとおりです。
- 1962(昭和37)年4月2日以降生まれの人:1か月につき0.4%
- 1962(昭和37)年4月1日以前生まれの人:1か月につき0.5%(最大30%)
また、付加年金は老齢基礎年金と同じ割合で減額されますが、振替加算は減額の対象となりません。
繰上げによる減額率の計算式
繰上げによる減額率 = 繰上げ月数 × 減額率(0.4%または0.5%)
減額率一覧表
1962(昭和37)年4月2日以降生まれの人(1か月あたりの減額率0.4%)
| 繰上げ月数 |
60歳 |
61歳 |
62歳 |
63歳 |
64歳 |
| 0か月 |
24.0% |
19.2% |
14.4% | 9.6% | 4.8% |
| 1か月 |
23.6% |
18.8% |
14.0% | 9.2% | 4.4% |
| 2か月 |
23.2% |
18.4% |
13.6% | 8.8% | 4.0% |
| 3か月 |
22.8% |
18.0% |
13.2% | 8.4% | 3.6% |
| 4か月 |
22.4% |
17.6% |
12.8% | 8.0% | 3.2% |
| 5か月 |
22.0% |
17.2% | 12.4% | 7.6% | 2.8% |
| 6か月 |
21.6% |
16.8% | 12.0% | 7.2% | 2.4% |
| 7か月 |
21.2% |
16.4% | 11.6% | 6.8% | 2.0% |
| 8か月 |
20.8% | 16.0% | 11.2% | 6.4% | 1.6% |
| 9か月 |
20.4% | 15.6% | 10.8% | 6.0% | 1.2% |
| 10か月 |
20.0% | 15.2% | 10.4% | 5.6% | 0.8% |
| 11か月 |
19.6% | 14.8% | 10.0% | 5.2% | 0.4% |
1962(昭和37)年4月1日以前生まれの人(1か月あたりの減額率0.5%)
| 繰上げ月数 |
60歳 |
61歳 |
62歳 |
63歳 |
64歳 |
| 0か月 |
30.0% |
24.0% |
18.0% | 12.0% | 6.0% |
| 1か月 |
29.5% |
23.5% |
17.5% | 11.5% | 5.5% |
| 2か月 |
29.0% |
23.0% |
17.0% | 11.0% | 5.0% |
| 3か月 |
28.5% |
22.5% |
16.5% | 10.5% | 4.5% |
| 4か月 |
28.0% |
22.0% |
16.0% | 10.0% | 4.0% |
| 5か月 |
27.5% |
21.5% | 15.5% | 9.5% | 3.5% |
| 6か月 |
27.0% |
21.0% | 15.0% | 9.0% | 3.0% |
| 7か月 |
26.5% |
20.5% | 14.5% | 8.5% | 2.5% |
| 8か月 |
26.0% | 20.0% | 14.0% | 8.0% | 2.0% |
| 9か月 |
25.5% | 19.5% | 13.5% | 7.5% | 1.5% |
| 10か月 |
25.0% | 19.0% | 13.0% | 7.0% | 1.0% |
| 11か月 |
24.5% | 18.5% | 12.5% | 6.5% | 0.5% |
繰上げ受給を選択する際の注意点
繰上げ受給を選択する際は、次の点に注意が必要です。
- 寡婦年金の受給権がある場合、繰上げ請求が受理されると寡婦年金を受給できなくなります
- 繰上げ請求後は、国民年金の任意加入被保険者になることができません
- 繰上げ請求後に障害基礎年金の受給要件に該当した場合でも、65歳になるまでの間に初診日がある傷病による障害基礎年金は受給できません
- 一度繰上げ請求が受理されると、取消しや変更はできません
繰上げ受給は早く年金を受け取れるというメリットがある一方で、年金額が生涯にわたって減額されるため、健康状態や就労状況、老後の資金計画などを踏まえて慎重に判断することが大切です。
老齢基礎年金の繰下げ受給
老齢基礎年金の繰下げ受給とは、65歳から受給できる老齢基礎年金の受給開始時期を遅らせることで、年金額を増額できる制度です。
繰下げ受給を選択した場合、66歳から75歳までの間の希望する時期に受給を開始することができます。 受給開始を遅らせた月数に応じて年金額が増額され、増額後の年金額は生涯にわたって適用されます。
繰下げによる増額率
増額率は1か月につき0.7%で、75歳まで繰り下げた場合の増額率は最大84.0%となります。
また、付加年金は老齢基礎年金と同じ割合で増額されますが、振替加算は増額されないうえ、繰下げ待機期間中は受給できません。
繰下げによる増額率の計算式
繰下げによる増額率 = 繰下げ月数 × 0.7%
増額率一覧表
| 繰下げ月数 |
66歳 |
67歳 |
68歳 |
69歳 |
70歳 |
71歳 |
72歳 |
73歳 |
74歳 |
75歳 |
| 0か月 |
8.4% |
16.8% |
25.2% | 33.6% | 42.0% | 50.4% | 58.8% | 67.2% | 75.6% | 84.0% |
| 1か月 |
9.1% |
17.5% |
25.9% | 34.3% | 42.7% | 51.1% | 59.5% | 67.9% | 76.3% | |
| 2か月 |
9.8% |
18.2% |
26.6% | 35.0% | 43.4% | 51.8% | 60.2% | 68.6% | 77.0% | |
| 3か月 |
10.5% |
18.9% |
27.3% | 35.7% | 44.1% | 52.5% | 60.9% | 69.3% | 77.7% | |
| 4か月 |
11.2% |
19.6% |
28.0% | 36.4% | 44.8% | 53.2% | 61.6% | 70.0% | 78.4% | |
| 5か月 |
11.9% |
20.3% | 28.7% | 37.1% | 45.5% | 53.9% | 62.3% | 70.7% | 79.1% | |
| 6か月 |
12.6% |
21.0% | 29.4% | 37.8% | 46.2% | 54.6% | 63.0% | 71.4% | 79.8% | |
| 7か月 |
13.3% |
21.7% | 30.1% | 38.5% | 46.9% | 55.3% | 63.7% | 72.1% | 80.5% | |
| 8か月 |
14.0% | 22.4% | 30.8% | 39.2% | 47.6% | 56.0% | 64.4% | 72.8% | 81.2% | |
| 9か月 |
14.7% | 23.1% | 31.5% | 39.9% | 48.3% | 56.7% | 65.1% | 73.5% | 81.9% | |
| 10か月 |
15.4% | 23.8% | 32.2% | 40.6% | 49.0% | 57.4% | 65.8% | 74.2% | 82.6% | |
| 11か月 |
16.1% | 24.5% | 32.9% | 41.3% | 49.7% | 58.1% | 66.5% | 74.9% | 83.3% |
※ 1952(昭和27)年4月1日以前生まれの人、または2017(平成29)年3月31日以前に老齢基礎年金または老齢厚生年金の受給権が発生している人は、繰下げの上限年齢が70歳までとなるため、増額率の上限は42.0%です。
繰下げ受給を選択する際の注意点
繰下げ受給には年金額を増やせるメリットがありますが、受給開始までの間は老齢基礎年金を受け取ることができません。また、増額された年金額により所得が増えることで、所得税や住民税、社会保険料などに影響が生じる場合があります。
さらに、繰下げ待機期間中は振替加算が支給されないため、振替加算の対象となる人は受給総額が不利になるケースもあります。
そのため、繰下げ受給を検討する際は、健康状態や就労状況、生活資金の見通し、税金や社会保険料への影響などを総合的に考慮して判断することが大切です。
老齢基礎年金の計算方法と年金額
老齢基礎年金の年金額は、保険料納付済期間(保険料を納付した期間)および保険料免除期間(保険料の免除を受けた期間)に基づいて算出されます。
保険料免除期間については、免除の種類に応じて年金額への反映割合が異なります。一方で、合算対象期間(カラ期間)・納付猶予期間・学生納付特例期間は受給資格期間には算入されるものの、年金額の計算には反映されません。
老齢基礎年金の計算式
老齢基礎年金の計算式は、保険料免除期間の属する時期によって異なります。
2009(平成21)年4月以降は、免除期間が年金額に反映される割合が引き上げられています。
2009(平成21)年3月分以前の免除期間がある場合
2009(平成21)年4月分以降の免除期間のみの場合
2026(令和8)年度の老齢基礎年金の満額
2026(令和8)年度における老齢基礎年金の満額は、次のとおりです。
- 1956(昭和31)年4月2日以降生まれの人:年額847,300円(月額70,608円)
- 1956(昭和31)年4月1日以前生まれの人:年額844,900円(月額70,408円)
なお、上記は40年間(480か月)すべての期間について保険料を納付した場合の満額であり、保険料の未納期間や免除期間がある場合は、その期間に応じて年金額が減額されます。
付加年金とは?加入条件と計算方法
付加年金とは、国民年金の定額保険料に加えて付加保険料(月額400円)を納付することで、老齢基礎年金に上乗せして受け取ることができる年金です。
なお、付加保険料を納付できるのは、第1号被保険者および65歳未満の任意加入被保険者に限られます。
また、国民年金基金に加入している人は付加年金に加入することはできません。
付加年金額の計算式
付加年金額は、次の計算式によって算出されます。
付加年金額 = 200円 × 付加保険料納付月数
たとえば、10年間(120か月)にわたり付加保険料を納付した場合は、次のようになります。
- 支払った付加保険料の総額:48,000円(400円 × 120か月)
- 毎年受け取れる付加年金額:24,000円(200円 × 120か月)
この場合、付加保険料として支払った48,000円は、付加年金を約2年間受給することで回収できる計算になります。
そのため、付加年金は比較的少ない負担で将来の年金額を増やせる制度として知られています。
なお、付加年金額は「200円 × 付加保険料納付月数」で計算される定額の年金であり、老齢基礎年金とは異なり、物価や賃金の変動による改定(物価スライド)は行われません。
振替加算とは?加給年金額との違い
厚生年金保険では、老齢厚生年金などの受給者に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合、その老齢厚生年金などに加給年金額が加算されます。
加給年金額の対象となっている配偶者が65歳に達し、老齢基礎年金の受給権を取得すると、加給年金額の加算は終了します。 その代わりとして、一定の要件を満たす場合には、配偶者の老齢基礎年金に振替加算が加算されます。
振替加算は、加給年金額の対象となっていた配偶者に対する経過的な給付として設けられている制度です。
振替加算の対象となる主な条件の一つとして、1926(大正15)年4月2日から1966(昭和41)年4月1日までに生まれていることが挙げられます。
なお、振替加算の金額は生年月日に応じて異なり、老齢基礎年金に上乗せして支給されます。
また、振替加算額は年齢が若い世代ほど段階的に少なくなり、1966(昭和41)年4月2日以降に生まれた人には支給されません。
振替加算は生年月日だけで支給の可否が決まるものではなく、加給年金額の対象となっていたことなど一定の要件を満たす必要があります。さらに、配偶者本人の厚生年金保険の加入期間によっては支給されない場合があります。
FP試験での出題ポイント
FP試験では、次のポイントを重点的に押さえておくと得点源になります。
① 受給資格期間
- 老齢基礎年金の受給資格期間は10年以上
- 受給資格期間は「保険料納付済期間+保険料免除期間+合算対象期間(カラ期間)」
- 納付猶予期間・学生納付特例期間は受給資格期間に算入されるが年金額には反映されない
- 合算対象期間(カラ期間)は受給資格期間に算入されるが年金額には反映されない
② 受給開始年齢
- 老齢基礎年金の受給開始年齢は原則65歳
③ 繰上げ受給
- 繰上げ受給は60歳から64歳まで可能
- 繰上げ受給の減額率は1962年4月2日以降生まれは1か月あたり0.4%
- 繰上げ受給の減額率は1962年4月1日以前生まれは1か月あたり0.5%
④ 繰下げ受給
- 繰下げ受給は66歳から75歳まで可能
- 繰下げ受給の増額率は1か月あたり0.7%
- 繰下げ受給の最大増額率は84.0%
⑤ 付加年金
- 付加年金額=200円×付加保険料納付月数
- 付加保険料は月額400円
- 国民年金基金加入者は付加年金に加入できない
- 付加年金額は物価スライドの対象外
⑥ 振替加算
- 加給年金額の対象となっていた配偶者が65歳になると振替加算が加算される
- 振替加算は生年月日に応じて金額が異なる
- 振替加算は繰上げ受給による減額の対象外
- 振替加算は繰下げ受給による増額の対象外