相続土地国庫帰属制度について
人口減少の進行に伴い、人が住まなくなった地域が増え、管理されない土地や所有者不明の土地が各地で発生しています。これにより、公共事業の実施に支障が出たり、相続により望まない土地を引き継ぎ人が増えたりするなど、さまざまな問題が深刻化しています。とりわけ「所有者不明土地」は、調査や開発に多大なコストを要するため、国や自治体にとって長年の課題となってきました。
こうした状況に対応するため、2023年に「相続土地国庫帰属制度」という新しい仕組みが創設されました。この制度により、相続や相続人への遺贈によって取得した土地を、一定の要件のもとで国に引き渡すことができるようになりました。
国庫帰属までの手続きの流れについて
相続土地国庫帰属制度を利用する際の手続きの流れは、以下のとおりです。
- 法務局への事前相談
まず、対象となる土地を管轄する法務局(本局)に事前相談の予約を行います。相談方法は、対面・電話・オンラインのいずれかも選択可能です。 - 申請書の作成・提出
審査手数料分の収入印紙を貼付した申請書を作成し、管轄の法務局(本局)に提出します。郵送での提出も可能です。 - 要件審査
法務大臣(法務局)が、提出書類の内容を審査した上で、現地へ赴いて土地の実地調査を行います。必要に応じて、申請者の同行を求められる場合があります。 - 承認・負担金の納付
審査(目安は約8か月)の結果、承認された場合は、期間内に負担金を日本銀行へ納付します。 - 国庫帰属
負担金の納付が確認された時点で、土地の所有権が国に移転します。所有権移転登記は国が行います。国庫に帰属した土地は、国が管理・処分を行います。
申請者の要件について
申請できるのは、相続または相続人への遺贈よって土地の所有権を取得した人です。相続登記が未了の場合でも申請は可能ですが、相続人であることを証明する書類の提出が必要となります。また、共有名義の土地については、共有者全員が共同で申請しなければなりません。
帰属ができない土地について
相続土地国庫帰属制度では、以下のいずれかに該当する土地は国庫に帰属させることができません。
申請ができない土地
以下の条件に該当する土地は、そもそも申請の対象外となります。
- 建物が存在する土地
- 抵当権・地上権・地役権・賃借権など、権利が設定されている土地
- 通路その他、他人による使用が予定されている土地(例:通路として利用されている土地、墓地内の土地、境内他、水道用地、用悪水路、ため池など)
- 土壌汚染がある土地
- 境界が不明確な土地、所有権の存否・帰属・範囲に争いがある土地
帰属の承認ができない土地
申請は可能でも、以下のいずれかに該当すると審査で承認されません。
- 崖がある(勾配30度以上かつ高さ5m以上)など、管理に多額の費用や労力を要する土地
- 管理や処分を妨げる工作物・車両・樹木などの有体物が地上に存在する土地
- 地下に、管理や処分のために除去が必要な有体物が存在する土地
- 隣地所有者などとの争訟がなければ管理や処分ができない土地
- 災害の危険があり、周辺の人や財産への被害を防止するための対策が必要な土地
- 動物による被害(人・農産物・樹木など)を生じさせる土地
- 国による整備(造林、間伐、保育)が必要となる森林や山林
- 国庫帰属後に国が金銭債務を負担することとなる土地
負担金について
負担金は、土地の種目を「宅地」「農用地」「森林」「その他」の4種類に区分した上で、それぞれの標準的な管理費用を基に算出される10年分の土地管理費相当額です。10年分の管理費相当額を納付するのは、帰属の承認を受けた際の1回のみです。
負担金の金額は、一筆につき20万円が基準とされていますが、土地の種目・面積・所在地によって異なる場合があります。
国庫帰属の申請が承認されると、法務局から申請者宛に負担金額の通知と、納付に必要な納入告知書が送付されます。申請者は、納入告知書に記載された負担金額を、通知到達日の翌日から起算して30日以内に、納入告知書を添えて日本銀行へ納付します。