消費者契約法について
消費者契約法は、消費者と事業者との間に存在する情報の質および量の格差や交渉力の格差に着目し、消費者の利益の保護を目的として制定された法律です。
この法律では、事業者による不適切な勧誘行為によって、消費者が誤認または困惑して契約の申込みや承諾の意思表示をした場合、その意思表示を取り消すことができると定められています。
また、事業者の損害賠償責任を一方的に免除する条項や、その他消費者の利益を不当に害する契約条項については、その全部または一部を無効とする規定が設けられています。
さらに、消費者被害の発生または拡大を防止するため、適格消費者団体が事業者に対して不当な行為の差止めを請求できる制度も整備されています。
このように、消費者契約法は、消費者の権利と利益を保護するとともに、国民生活の安定・向上および国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています。
事業者と消費者の努力義務について
事業者の努力義務
事業者は、消費者契約の適正な締結および消費者利益の保護を図るため、以下の措置を講ずるよう努めなければなりません。
- 契約条項の明確化・平易化
消費者契約の条項を定める際には、消費者の権利義務その他の契約内容について、解釈に疑義が生じないよう明確にするとともに、消費者にとって分かりやすい表現となるよう配慮することが求められます。 - 勧誘時の情報提供
消費者契約の締結に向けた勧誘を行う際には、契約の対象となる物品、権利、役務その他の内容や性質に応じて、事業者が把握し得た消費者の年齢、心身の状態、知識および経験を総合的に考慮し、消費者の権利義務その他の契約内容に関する必要な情報を提供するよう努めなければなりません。 - 定型約款に関する情報提供
民法に規定する定型取引に該当する消費者契約を締結する際には、消費者が定型約款の内容を容易に確認できる場合を除き、消費者がその内容を把握するために必要な情報を提供するよう努めなければなりません。 - 解除権に関する情報提供
消費者から求めがあった場合には、契約に基づいて消費者が有する解除権を適切に行使できるよう、その行使に必要な情報を提供するよう努めなければなりません。
消費者の努力義務
消費者は、消費者契約を締結するに当たり、事業者から提供された情報を活用し、自らの権利義務および契約内容について十分に理解するよう努めなければなりません。
消費者契約の申込みまたは承諾の意思表示の取消しについて
消費者は、事業者が消費者契約の締結に際して行った一定の不当な勧誘行為によって誤認または困惑し、その結果として契約の申込みまたは承諾の意思表示をした場合には、その意思表示を取り消すことができます。
誤認による取消し
次のいずれかの行為によって消費者が誤認し、契約を締結した場合には、その意思表示を取り消すことができます。
- 不実告知
重要事項について事実と異なる内容を告げられ、それを事実であると誤認した場合。 - 断定的判断の提供
契約の対象に関する将来の価額、将来受け取る金額その他の不確実な事項について断定的な判断を示され、その内容が確実であると誤認した場合。 - 不利益事実の不告知
重要事項またはこれに関連する事項について消費者の利益となる旨を告げる一方で、消費者に不利益となる事実を故意または重大な過失によって告げず、消費者がその事実は存在しないと誤認した場合。
困惑による取消し
次のいずれかの行為によって消費者が困惑し、契約を締結した場合には、その意思表示を取り消すことができます。
- 不退去
消費者が住居や勤務先などから退去するよう求めたにもかかわらず、事業者が退去しない場合。 - 退去妨害
消費者が勧誘を受けている場所から退去する意思を示したにもかかわらず、事業者が退去を妨げた場合。 - 退去困難な場所への同行
消費者が自由に退去することが困難な場所であることを知りながら、そのことを告げずに同行させ、その場所で勧誘を行った場合。 - 連絡妨害
契約締結の可否について第三者と連絡を取ろうとする消費者に対し、威迫する言動を用いてその連絡を妨げた場合。 - 不安をあおる告知
社会経験の乏しい消費者が抱く不安を知りながら、その不安をあおり、契約の目的となる商品やサービスが不安解消のために必要であると告げた場合。
不安の対象となる事項には、次のようなものがあります。 - 進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要事項
- 容姿、体型その他の身体的特徴や状況に関する重要事項
- 好意の感情の不当な利用
消費者が勧誘者に恋愛感情その他の好意の感情を抱き、相手も同様の感情を抱いていると誤信していることを知りながら、それに乗じて「契約しなければ関係が破綻する」などと告げた場合。 - 判断力の低下の不当な利用
加齢または心身の故障により判断力が著しく低下している消費者が、生計や健康に関する不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、合理的な根拠なく契約が必要であると告げた場合。 - 霊感等による知見を用いた告知
霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見を示し、消費者またはその親族の生命、身体、財産などについて重大な不利益が生じると不安をあおり、またはその不安に乗じて契約が不可欠であると告げた場合。 - 契約締結前の債務の履行等
契約の申込みまたは承諾の意思表示をする前に、契約により負うべき義務の全部または一部を実施し、または目的物の現状を変更することにより、原状回復を著しく困難にした場合。 - 契約締結前の事業活動に関する告知
契約の申込みまたは承諾の意思表示をする前に、事業者が調査、情報提供、物品調達等の事業活動を行い、それが消費者の特別な求めによるものではないにもかかわらず、「消費者のために特別に実施した」「契約しなければ費用や損失の負担を求める」などと告げた場合。
通常を著しく超える契約内容による取消し
次のいずれかに該当する場合には、消費者は契約を取り消すことができます。
- 過量契約
契約の目的となる物品、権利または役務の分量、回数または期間が、消費者にとって通常必要とされる程度を著しく超えるものであることを事業者が知りながら契約を締結した場合。 - 既存契約との合算による過量契約
消費者が既に同種の契約を締結しており、その契約と新たな契約の分量等を合算すると通常必要とされる程度を著しく超えることを事業者が知りながら契約を締結した場合。
取消権の期間制限
取消権は、追認をすることができる時から1年間(霊感等による知見を用いた告知に基づく取消しについては3年間)行使しないときは、時効によって消滅します。
また、契約締結の時から5年間(霊感等による知見を用いた告知に基づく取消しについては10年間)を経過したときも、取消権は消滅します。
消費者契約の条項の無効について
消費者契約法では、消費者の利益を不当に害する一定の契約条項について、その全部または一部を無効としています。
無効となる主な契約条項は、以下のとおりです。
損害賠償責任の免除・制限に関する条項
次のような、事業者の債務不履行による損害賠償責任を不当に軽減する条項は無効となります。
- 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害について、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項
- 事業者に損害賠償責任の有無を決定する権限を付与する条項
- 事業者の損害賠償責任の一部を免除する条項
- 事業者に損害賠償責任の限度額を決定する権限を付与する条項
不法行為に関する責任の免除・制限に関する条項
次のような、事業者の不法行為による損害賠償責任を不当に軽減する条項は無効となります。
- 事業者がその債務の履行に際して行った不法行為により消費者に生じた損害について、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項
- 事業者に損害賠償責任の有無を決定する権限を付与する条項
- 事業者の損害賠償責任の一部を免除する条項
- 事業者に損害賠償責任の限度額を決定する権限を付与する条項
過失による責任の免除に関する条項
債務不履行または不法行為による損害について、事業者の損害賠償責任の一部を免除する条項であって、当該条項が「事業者に重大な過失がある場合には適用されない」旨を明示していないものは無効となります。
解除権の制限に関する条項
次のような、消費者の解除権を不当に制限する条項は無効となります。
- 債務不履行によって生じる消費者の解除権を放棄させる条項
- 事業者に解除権の有無を決定する権限を付与する条項
- 消費者が後見開始、保佐開始または補助開始の審判を受けたことのみを理由として、事業者に解除権を付与する条項
損害賠償額および違約金に関する条項
次の条項については、一定の範囲を超える部分が無効となります。
- 契約の解除に伴う損害賠償額または違約金を定める条項について、当該解除により事業者に通常生ずべき平均的な損害額を超える部分
- 消費者が支払期日までに金銭債務を履行しなかった場合の損害賠償額または違約金を定める条項について、年14.6%を超える部分
意思表示の推定および消費者の利益を不当に害する条項
次のような条項は無効となります。
- 消費者が何らの意思表示をしなかったことをもって、契約の申込みまたは承諾の意思表示をしたものとみなす条項
- 民法その他の法令に規定する任意規定の適用による場合と比較して、消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項であって、信義則に反し、消費者の利益を一方的に害する条項